
パンクが今よりずっとマイナーだった90年代、ハイスタの「MAKING THE ROAD」で初めてパンク/メロコアに出会ったという人は少なくないだろうし、自分もその一人だった。
きっと今でもハイスタきっかけでメロコアに興味を持つ人はいると思う。
そこでそんな人向けにオススメの洋楽メロコアバンドを紹介したい。
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メロコアとは?ジャンル分けについて
ジャンルの名称について補足。
パンクとかメロコアとか最初は違いがピンとこなく疑問に思うかもしれない。
他にも「ハードコア、泣きコア、エモコア、初期パンク、ポップパンク、パワーポップ、パブロック」など色々言葉があって、ややこしい。
自分も具体的な説明はできないが、とりあえず次の2つのことは言える。
一つはジャンル分けはさほど重要ではなく、曖昧で便宜的なものであるということ。
(当時からジャンル分けの意義については色々言われてたけど、少なくともこうやって人に紹介したい時とか近い音楽を探したい時にはすごい便利だと思う)
もう一つはメロコアは「メロディック・ハードコア」の略で、パンクの一ジャンルであること。
特徴としては名前の通り「メロディ」重視で、もう一つ「疾走感」というキーワードが挙げられる。
ジャンルの境界線は曖昧かもしれないが、この2つの要素が重要なポイントであることは間違いない。
ここで紹介するバンドも全部この2つの要素を備えたものをピックアップしている。
ハイスタ好きにオススメの洋楽メロコアバンド 12選
全部海外のバンドで12組選んだ。
前半6組は2001年に出版された音楽雑誌で横山健自身が(も)リコメンドしてるバンド。
雑誌では52枚のアルバムを紹介してるが、メロコア以外も多いので、メロコアバンドのみピックアップしている。
[出典] 「ムック 横山健 (リットーミュージック・ムック―GM special feature series)」(Amazon)
後半6組は、自分が選んだバンド。
記事のタイトル通り、ハイスタにハマった後同ジャンルのバンドを探して気に入ったものをピックアップしている。
横山健が勧める洋楽メロコアバンド 6組
健さんが選んだアーティストから。アルバムも健さんセレクト。
雑誌では全アルバム、コメントも合わせて紹介されているので引用しつつ紹介する。
01. SNUFF
「ハイスタの次に聴く」で一番最初に挙げるべきなのは間違いなくこのバンドだろう。
なので、スナッフ(と次のバッドレリジョンだけ)少し文量多めで紹介する。
活動期間は1986年〜、出身はイギリス・ロンドン。
オススメアルバムは「Snuff Said」。
雑誌でも触れられているが、そもそもハイスタの音楽性の源流となったのがこのsnuffと言える。
結成当初、3人が共通して好きだったのがザ・フーとスナッフだけだったらしい。
ハイスタの名前はザ・フーが以前使っていた名前「ハイ・ナンバーズ」から。「ハイ」に合う単語を出し合って「ハイスタンダード」が一番しっくりきたので決めた、とのこと。
自分はハイスタ以前はほぼJ-POPしか聴いていなかったので、ハイスタの音楽は良い悪い以前にとにかく新鮮だった。
その後、このSNUFFを初めて聴いた際のストレートな印象は「ハイスタだ!」。
それくらい以降紹介する同ジャンルのバンドの中でも音楽性・雰囲気が近い。
どれだけ新しく感じるものも、「ルーツが存在する」ということを体感した経験だった。
(だからと言って、ハイスタの価値が落ちるとは全く思っていないが)
【横山健コメント】
僕の人生を変えてしまったバンドです。スナッフとの出会いがなければ、たぶんハイスタンダードもこうなっていなかったと思います。80年代のたぶん中頃には活動を始めていたはずで、イギリスで3枚のアルバムを出して解散してしまったのですが、何年か前に復活してまたやってます。カバーがうまいというのが一つの特色になっていて、たぶんそのへんがファット・マイクにも影響を与えて、僕らにも影響を与えてます。
スナッフはどのアルバムもいいですけど、まず1stの『SNUFF SAID』ですね。たぶんギター一本で重ねてないんですけど、疾走感がものすごいですよ。こんなのどうやったら作れるのかなと思いますけどね。アルバム録る日程とか決めてないんじゃないですかね。「今から録ってみっか!」と適当にやってる感じがするんですよ。それがライブ・アルバムのような生の感じとか疾走感となって現れてる気がします。
「SNUFF SAID」ではティファニーの「ふたりの世界(I THINK WE’RE ALON NOW)」やジミ・ヘンドリックスの「パープル・ヘイズ」をカバーしてます。このアルバムはFAT WRECK CHORDSと契約して再発されたのですが、7インチの曲とかも入ってお買い得になっています。「WHAT KIND OF LOVE」という超名曲も入ってますので、みんなに聴いてほしいですね。
のちに「WHAT KIND OF LOVE」はSNUFFのトリビュートアルバムで健さん自身がカバーしている。
この曲も普通に横山健オリジナルだと言われて聴いても全く違和感がない。それくらいsnuffとハイスタの音楽性は近い。
SNUFFは復活後、PIZZA OF DETEHからCDを出していたり、とにかくハイスタとの縁が深く、ハイスタを語る上では欠かせないバンドだ。
02. BAD RELIGION
活動期間は1979年〜、出身はアメリカ・ロサンゼルス。
オススメアルバムは「Against Grain」。
いわゆる「ハイスタっぽいメロコア」のルーツはSNUFFと言えそうだが、メロコアのルーツとしてはバッドレリジョンも欠かせない存在だ。
健さんのオススメとして挙げたけど、個人的にもハイスタ以外で一番聴き込んだメロコアバンドである。
バッドレリジョンのguitar、ブレット・ガーヴィッツはインディーズパンクロックレーベル「エピタフ」を設立。
エピタフからリリースした「パンクオーラマ」という激安オムニバスシリーズは、大ヒットした。
自分もこのパンクオーラマシリーズでバッドレリジョンやオフスプリング、NOFXなどを知って、色々なアルバムを聴くキッカケとなった。
バッドレリジョンの「MAN WITH A MISSION」という曲は日本の同名バンドの由来にもなっていて、あの被り物スタイルもCDジャケットから来てると思われる。
(まさか本人たちはそこまで真似されるとは予想だにしなかっただろう…。)
今年(2017年)には来日公演を果たし、MAN WITH〜がサポートアクトで共演を果たしている。
と、すごいオススメのバンドだけど、健さんのコメントは結構アッサリしている。
バイト先で初めて聴きましたが、こんな音楽があるのかと思った一枚。バッドレリジョンはアルバムに1〜2曲は良い曲が入ってるものの、あとの曲がつらい場合も多いのですが、このアルバムは名曲揃いです。
03. EVERCLEAR
活動期間は1991年〜、出身はアメリカ・オレゴン。
オススメアルバムは「So Much for the Afterglow」。
これはですね、音にビビりました、まず。アンディ・ウォーレスっていう有名なエンジニアがやっているのですが、1発目の”ガーン!”って音がすごいんですよ。「ソー・マッチ・フォー・ジ・アフターグロウ」って曲なんですけど、もう持っていかれます。(中略)。
余談ですが、「MAKING THE ROAD」の時にアンディ・ウォーレスにミックスを頼もうと思ったんですが、断られました(笑)。でも結果的によかったと思うんですよ。そんな大御所に頼まなくても、自分らの目の届く範囲でやれたってことが。
04. The Get Up kids
活動期間は1995年〜、出身はアメリカ・ミズーリ。
オススメアルバムは「Something to Write Home About」。
これは最近”エモ”って言葉で騒がれてるバンドなんですけど、まぁそんなこと関係なく曲がいいですね。1曲目の「ホリデイ」は特に好きな曲です。来日公演も観に行って、1本一緒にライブもやって、すごく仲良くなったバンドです。これはフルアルバムとしては2枚目ですが、このジャケットがまた泣かせるんですよね、このどうしようもない感じが。”ロボットふたつ寄り添って、お前ら一体どうすんだ?”っていう感じが(笑)。(中略)。
僕らの『LOVE IS A BATTLEFIELD』のジャケットを作る時に、このアルバムに触発されました。”もうどうしようもないものがふたつ合わさってお前らどうする”みたいな…ちょっと寂しいじゃないですか、これ。僕はこのジャケットを見ると、もうどうしようもない気分になりますね。
↓「Something to Write Home About」のジャケット。
↓インスパイアされたというハイスタのジャケット。
ここ数年「エモい」という言葉を耳にするが、健さんも言ってるように初めて「エモ」という言葉を聞いたのはこのGet Up kidsだった。
(「エモい」もこのシーンから来てるような気がするんだけど、どうなんだろう)
05. Green Day
活動期間は1987年〜、出身はアメリカ・カルフォルニア。
オススメアルバムは「Dookie」。
green dayはハイスタを知ってたら既に知ってるかもしれないが。
「Making The Road」の出荷枚数は国内外で100万枚、「Dookie」は全世界で2,000枚らしい。
これはメジャー・デビュー・アルバムで通算3作目なんですけど、この次のアルバム「インソムニアック」のツアーで、僕ら一緒に回ったんですよ。アルバムとしてはその次の「ニムロッド」が一番好きです。
実は僕、グリーン・デイのステージで毎日1曲ギター弾いてたんですよ。それは1stアルバム「1039/スムーズド・アウト・スラッピー・アワーズ」の「ノレッジ」とうい曲で、オペレーション・アイビーのカバーです。そんなこともあって”健はこのバンドの4番目のメンバーだ”っていうサインをこのアルバムにもらいました。だからハイスタ辞めたらグリーン・デイに入ろっかなって思ってます(笑)。
06. lagwagon
活動期間は1990年〜、出身はアメリカ・カルフォルニア。
オススメアルバムは「Let’s Talk About Feelings」。
曲は「Messengers」が最高とあるけど、個人的に好きな「May16」を選曲。
これは通算5枚目なんですけど、全曲いいですホントに!もう「これ聴けー!」って感じですね。1st、2ndはわりといんですが、2rd、4thがあんまりよくないので、ラグワゴンは終わった、と思ってたんですよ。ところが次に出してきたのがこれ。9曲目に「Messengers」という曲があるんですけど最高に良い曲です。(中略)。
ギタリストとして、「MAKING THE ROAD」を作る時にこのアルバムからすごくインスパイアされました。特に音の使い方とか、入れ方とか。だから僕の中ではすごく重要なアルバムです。僕らともすごく仲の良いバンドです。いずれまた日本に呼んで一緒にツアーしたいですね。
当ブログオススメの洋楽メロコアバンド 6組
自分がハイスタに出会った後(90年代〜2000年代前半くらいに)よく聴いてたバンド6組。
07. MXPX
活動期間は1992年〜、出身はアメリカ。
オススメアルバムは「The Ever Passing Moment」。
「The Ever Passing Moment」は確かハイスタにハマってから初めて買った洋楽パンクアルバムだった。
日本では日産のCMで「The Broken Bones」が流れていたので、聴いたことがあるという人も多いだろう。
洋楽もパンクも聴いたことない人も一聴してノレる、キャッチーな曲満載である。
08. ジャイガンター
活動期間は1991年〜、出身はドイツ。
オススメアルバムは「It’s All Cover Now, Baby Blue!」。
元々カバーバンドをコンセプトに結成されたバンドだが、オリジナルアルバムも発表している。
ただ、やはり一番のポイントとして挙げたいのは、日本のロックやポップソングを数多くメロコア調でカバーしている点だろう。
PUFFY「アジアの純真」や「海へと」など日本のヒットソングをドイツのバンドが全編日本語で歌ってるって、なんだかそれだけで感慨深い。
正直そこまでハマってない曲もあるが、コブクロ「蕾」やブルハ「リンダリンダ」は一聴の価値があると思う。
09. fastcars
活動期間は1970年代後半〜(?)、出身はイギリス・マンチェスター。
オススメアルバムは「Coming… Ready Or Not!」。
オリジナルは1978年に1枚「THE KIDS JUST WANNA DANCE」のみ発表して解散、その後20数年の時を経て再始動、1stアルバムを発表したという珍しい経歴のバンド。
初期パンク全盛期に活動していたバンドだけあって、メロコアというより初期パンクっぽい匂いがする。
これだけ一般的にも「メロコア」というジャンルでは括られていないと思う。
でも、snuffより前にこれだけメロディックで楽しいパンクを歌ってたのは相当画期的だと思うのでピックアップした。
CDは昔から手に入りにくいようだが、spotify、apple musicで配信されてるのでぜひ聴いてみてほしい一枚。
10. Dropkick Murphys
活動期間は1996年代後半(?)、出身はアメリカ・ボストン。
オススメアルバムは「Sing Loud, Sing Proud」。
バグパイプやアコーディオン、マンドリンなど、アイリッシュ・ミュージック色が濃い点と野太いコーラスのシンガロングスタイルで数多あるメロコアバンドの中でも異色の存在感を放っている。
「Sing Loud〜」はCDショップで試聴して即購入した一枚。
久しぶりに聴いたら、やっぱり男臭くて力強い音の奔流がめちゃくちゃ気持ちいい。
1. less than jake
活動期間は1992年〜、出身はアメリカ・フロリダ。
オススメアルバムは「Borders & Boundaries」。
メロコアの中でもホーンやギターの裏打ちなどスカの要素が取り入れられるのが特徴。
日本でのメロコアブームの際はスカコアバンドも沢山出てきたが、スカの要素が強くて好きになったのはコレとジッタリンジンくらいだった。
【追記 2018.05】
最近スカパンクバンドのThe Interruptersにがっつりハマったので訂正、追記。
The Interruptersのレーベルは上のDropkick Murphysやoperation ivy、ランシドで有名なHellcat Records。
紅一点のヴォーカル Aimee AllenもPVのセンスもかっこよすぎる。
12. Leatherface
活動期間は1988年〜、出身はイギリス・サンダーランド。
オススメアルバムは「Byo Split Series #1 – Split」。
SNUFFと並ぶUKメロコア界の重鎮。
雑誌で健さんのオススメリストには入ってなかったが、ハイスタが一番はじめに対バンした海外のバンドがこのレザーフェイスらしい。
BAD RERIGIONのグレッグ・グラフィンの声も渋いが、Leatherfaceのフランキー・スタッブスはそれを上回るほど渋い。
さいごに
当時はCDを紹介されても中々聴けなかったし、結局聴けずじまいになったバンドも多い。
今は聴こうと思ったら大体すぐに聴けるので、参考にしてもらえたらと思う。
fastcarsがいつでもすぐに聴けるって本当に凄い世界になったな、、としみじみ思う。
さいごに、「メイキング・ザ・ロード」が出た頃の様子について少し。
当時のハイスタとメロコアブームについて
シンプルにいうと、とにかく勢いと影響力が凄かった。
2000年前後は「ハイスタっぽい」バンドがプロ・アマ問わず大量に現れた。
当時、雑誌である日本のバンドがこんなコメントをしていたのがそれを象徴している。
「ハイスタの下にうじゃうじゃいる”ハイスタっぽい”バンドにはなりたくない」
(このバンドは、スマッシュヒットもなく消えていったが。)
ロンドンナイトの大貫憲章が、日本のロック史の中で一時代を築いたという意味合いで、ブルハとハイスタの2組を「双頭の鷲」と称していた。
正にその頃、パンクロックシーンは「ブルハっぽい」バンドか「ハイスタっぽい」バンドで溢れていた。
ブルハとハイスタは10数年の間隔があるので、そのフォロワー達が同時期に大量発生した点はちょっと興味深い。
もう一つ付け足すと、ドラゴンアッシュのインパクトも大きく、同じ頃にDAっぽいバンドも増えた。
あそこまで目に見える形でシーンが変化したのを目にしたのは、あの時だけだし、今後ももうないんじゃないだろうか。
そう考えると、貴重な体験だったなと思う。
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