ここ数年、「レコード人気が再燃中」というニュースをよく見かけるようになった。
あらたにレコードに興味をもった人も多いだろうし、自分もその一人。

「いつかはレコードを」と思っていて、いよいよ購入に踏み切ろうと考えている(結局まだ買えてないのだけど)。

ともあれ、レコードに興味を持って、次に気になるのは「レコードの良さは?CDとの音質の違いは?」ということだろう。

そこで、レコード推しの中でもよく名前が挙がるクロマニヨンズの甲本ヒロトはどう言ってるのか?
所持している3冊の雑誌のインタビューから抜粋して紹介したい。

未見の人は「そこまで違いがあるのか」「そこまでヒロトはレコードをオススメしてたんだ」とちょっと驚くかもしれない。

クロマニヨンズ 甲本ヒロトのレコードへのこだわり

リリースしている音源について

甲本ヒロトはブルーハーツでデビュー後にレコードからCDへの過渡期を経験している。

その後、ブルーハーツ作品はCDのみのリリースになった時期もあるが、ハイロウズからアナログ盤リリースが復活。
2017年にはマーシーのソロ2作品含め、ブルハ作品がアナログレコードでまとめて再発されている。

クロマニヨンズももちろん毎回アナログ盤をリリース。
こだわりを感じるのは、CDもアナログレコードで録音したものを流して、それを録音しているということ。

試したら、その方が好みの音だったらしい。
ヒロト曰く「ぼくらのCDはアナログマニアの友達が録音したCD-Rだと思って」とのこと。

クロマニヨンズのライブで感じたレコード熱

ライブはハイロウズ時代から行っているが、クロマニヨンズになってからヒロトのMCである変化が見られた。

それは曲順をレコード仕様で言うこと
つまり、「次はA面の◯曲目、B面の◯曲目」という表現をするようになったのだ。

2017年は「BIMBOROLL」、「ラッキー&ヘブン」のレコ発をそれぞれ2回ずつ参加したが、おそらくこの辺りから言うようになったようだ。

それが「これは自分もいよいよ買わなければ」と思わされたキッカケの一つになっている。

甲本ヒロトがレコードをオススメする理由は「音」!

レコードの魅力は色々と挙げられるけど、一番肝心なのは音だと思うし、ヒロトもまずは何よりも音を理由に挙げている。

初めて聴いた瞬間からCDの音では響かず、そこで改めてアナログレコードの音の良さに気づいたそうだ。

以下、「KAMINOGE vol.14」からの引用で、ブルーハーツ時代、1987年頃に初めてCDを聴いた時の感想。

誰も見ていない状況で嗚咽をあげたりするんです。それがボクのレコード鑑賞。オーティス・レディングがCD化されたときに買ってみたんだよね。で、かけたんだ。そのときに一粒も涙が出ないんだよ。びっくりして、「オーティス・レディングを聴いて泣けないってことは、ボクはもう音楽好きじゃなくなったんだ」と思って。「ああ、終わったな俺」と。

大好きなオーティス・レディングを聴いても感動できなかったことで、「これからバンドはどうしよう」と本気で不安になったという。

ちなみにヒロトのオーティス・レディング好きは結構有名で、「トレイントレイン」のラスト「お前を離さない」はイントロから「I Can’t Turn You Loose」を彷彿とさせる。
(「お前を離さない」はマーシー作詞作曲なのでマーシーも好きなんだろう)

話を戻して、そのショッキングな出来事のあとに、レコードを聴いたら今まで通りの感動があったと書いている。

そんで、まあいつものようにレコードでオーティス聴いたら、直角に涙が出たんだよ!もう、地面と平行に「ビュー!」って。

「あれ!?」と思って。「これCDのせいだったんだ」とその時、気づいた。

音のマニアでもないから説明もできないけれど、体がそういう反応をしたんです。「泣くか、泣かないか」の2つのどちらかで。それだけで判断した。

よくレコードとCDの音質比較で周波数帯域の説明を見かける。
レコードの方が周波数帯域が広く、CDでは聞こえない音が聞こえる、など。

でもヒロトはスペックなどは用いないで、自分の感覚をダイレクトに、また身近なものに置き換えて伝えている。
同雑誌では、CDとレコードの音を次のように例えている。

だから、ボクはレコードとCDの違いを説明するときになんて言うかっていうと、「大きなプールに枯れ葉が何枚か浮いてる」と思えばいいんだよ。つまりさ、その枯れ葉がレコードのパチパチだとかチリチリっていう雑音だと思えばいい。で、CDはその枯れ葉が一枚も浮いてないんだよ。その代わり水はコップ1杯なんだよ。

ボク、枯れ葉があってもプールの方がいいや。そっちの方がいいね。

↓別の雑誌「DONUT vol.3」でのインタビュー。
アナログを知らないでCDを聴いてる人に対して次のように言っている。

なんかおせっかい焼きたくなるんだよね、じれったくて。隣にめちゃ美味しいレストランがあるのに、ゲロまずの店に並んでる奴を見ると教えてあげたくなるじゃん。その感覚なんだけど。最終的に好みで「いや、こっちのレストランの方が好きなんだ」って言って並んでんだったらしょうがねぇんだけど。でも、僕らが言ってる方のレストランの物を食べたことがないんだよ。「一口食ってみ?」って言いたくなるよね。そういう感覚なんですよ。

まとめると「自分はレコードの音の方が美味しい。だから人にも食べてもらいたい」と。
すごくシンプルな話だと思う。

「DONUT」のインタビューの最後では、

「自分たちはアナログとデジタル両方を聞き比べた世代で、その感覚が染み込んでるから」

という要因も大きいとした上で、

「聴くフォーマットなんか関係なく、突き抜けてくるもんですよ。ロックンロールは。」

という言葉で締められている。

それでも、「できればアナログレコードで聴いてほしい」という気持ちがビシビシ伝わる内容になっている。

ヒロトのインタビューを読んで自分なりに思うこと

ヒロトの体感について「本当にCDとそこまで違いが?」と思う人もいるかもしれない。
自分は生粋のCD世代なので、CD音質でがっかりしたことはない。

でも、ヒロトが体感したのはこういう感覚かもと思った経験がある。

それは、去年、初めてアイドルのライブに行った時のこと。
アイドルといっても純粋に音楽が好きで、普通のライブと同じように曲を楽しみに行ったら、開演してすぐに違和感が。

何かが違う。音は聞こえるけど、体まで届かない、響かない感じ。

その原因は割とすぐに気づいて、アイドルのライブでは演奏がCD録音だったから。

それまで生演奏のライブしか経験がないせいか、違和感がすごくて、気持ちは終始冷めたままだった。

その時に「ヒロトが初めてCDを聴いたときは、こういう感じだったのかな」となんとなく思った。

そういう意味でヒロトの言うように、純粋なスペックの差だけでなく、今までの慣れといった主観的な要素が大きいと感じる。

ヒロトがレコードで聴くもう一つの理由。当時の音は当時のソフトとハードで聴く!

「SHAKE」のインタビューから、もう一つレコードを勧める理由を紹介。

ヒロトはレコードプレーヤーの他、蓄音器と電蓄でレコードを聴いている。

その理由は音の良さの他に、
「当時のミュージシャンはCDの音を知らず、レコードで音楽を作っていたんだから、レコードで聴くのが理にかなっている」
から。

これも凄くシンプルで、なるほどと思った。

インタビューからは詳細な時期はわからないが、1930〜40年代のものは蓄音器。
50年代は電蓄。60年代〜はレコードプレーヤーという使い分けをしてるようだ。

蓄音器についてのコメントを「SHAKE」から引用。

蓄音器を入手した動機は単純で、当時の再生装置で当時の音を鳴らしたかったんですよ。それが一番理にかなっていると思ったんだよね。例えば今の音楽だったら、「CDプレイヤーで聴く」ということでいいと思うんです。

それは作者本人がCDをつくろうとしてつくったものだから。だけど、僕らが好きな70年代、60年代、50年代の音楽、もっと古い40年代、30年代の音楽とか遡っていくと、その時々のテクノロジーというかソフトとハードがあるんですよ。

で、当時の音楽を当時の再生装置で鳴らしてやると、表現者の意図がわりとストレートに伝わってくる気がするんです。


蓄音器はすごいよ。リアルなゴリラが部屋の中に入ってきて、大きなトンカチを持って窓ガラスを割ったり、テーブルを叩き割ったりして、大暴れしてる感じなんだよ。

ゴリラが暴れる迫力の音ってぜひ聴いてみたいし、ヒロトも「心から音楽に興味があって聴いてみたいのなら蓄音器を」と勧めている。

ただ、さすがに一般人が蓄音器でのレコード鑑賞は難しい気がする。
なぜならボリュームの調整ができないから。

電蓄ならできるらしいけど、それでも中々敷居が高そうだ。

それからうちには電蓄もあるよ。電蓄っていうのはね、電気式の蓄音器。

エルヴィスプレスリーが出てくるロックンロールの時代には電蓄が主流なんですよ。

蓄音器でエルヴィスの「ラブミーテンダー」を聴いた時の印象も語っていて、それもすごく印象的だった。

よく昔のニュース映像で、エルヴィスが現れて、一言何かを言うだけで、客席の女の子たちが髪の毛をかきむしりながら「キャァァッ!」って言うじゃないですか。
ああいう気持ちになるんだよ。

ポロンポロンっていうギターのイントロから始まって「ラブ・ミー♪」って歌われた瞬間から「キャァァッ!」ていうあの気持ちがすごく理解できた。

僕のなかの「雌(メス)」が叫んだんだよ。

「僕のなかの「雌(メス)」が叫んだんだよ。」
表現者は、自分の感情の表現も上手いなと感心する。

また、レコードプレーヤーについても、
「60年代のビートルズやローリングストーンズの時代を聴くときには、60年代のイギリスの家庭にあった普通のステレオセットで聴くのが理想」
と、やはり当時に近い環境で聴きたいと語っている。

さいごに

まとめると、ヒロトがレコードを勧める理由は2つ。

一つは「音が断然良いから!」
もう一つは、「レコード時代の音源はレコードで聴きたいから!」

ラジオなどでもヒロトはよくレコードについて語っている。
内容的には上で紹介した雑誌と大きな違いはないんだけど、音声で聞くとまた別の面で印象的なことがある。

それは、どの番組でも声に力がこもっていること。
もう何度も同じような質問を受けて答えてるにもかかわらず、惰性感が全然ない。

内容云々ではなく、その口ぶりから「本当にレコード(の音)が好きなんだ、人にも勧めたいんだ」ということが伝わってくる。

近頃一般的にもレコード人気が復活してるので、ヒロトファンという音楽好きであれば、ぜひレコードに興味を持ってもらえたらと思う。

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