ブルーハーツはしばしば宗教関連の話が話題にのぼるバンドである。
そこで、この記事では自分の知ってる限りで宗教関連のアレコレについてまとめたい。

(きっと本人たちはこんな昔の話掘り返して欲しくないと思いつつ。個人的にはブルハ関係なくずっとリアルタイムな感覚で関心のあるテーマではある)

どれも有名と言えば有名な話で、3人というのは、ベースの河口純之助ブルハのファンクラブ会長の亀岡寿江、そして甲本ヒロトの中学の同級生、中川智正

所属している宗教は河ちゃんが幸福の科学で、他の2人はオウム真理教。

宗教で思い浮かぶのは解散との関係だが、それについては別記事で書いていて、一応直接的な関係はないと思われる。
オウムの2人(亀岡・中川)も解散時期(1995年)に活動しているが、この2人に関しては確実に関係ない。

河ちゃんに関してはこの記事でも少し解散との関係に触れている。

ブルーハーツと周囲の宗教の信者について

一人ずつ簡単に。(河ちゃんのは他の記事と結構かぶってる)

ベース 河口純之助/幸福の科学

[Amazon] YOUNG AND PRETTY
真島真利(右上)甲本ヒロト(右上)河口純之助(左下)梶原徹也(右下)

河口純之助が入信したのは幸福の科学。
創始者兼総裁の大川隆法が1986に立宗した新興宗教で、本尊は仏陀の生まれ変わりであり、至高神エル・カンターレである大川自身。

河口は1990年頃、幸福の科学に入信。
ブルハの活動中は公言していなかったが、入信以降に作詞した「心の救急車、インスピレーション、宝もの」では信仰の影響がみて取れる。

ブルハ解散時のロッキングオンジャパン(1995.07)のインタビューでは幸福の科学との出会いがいかに凄かったか語っている。

(ブルーハーツでの10年間は河ちゃんにとってどういう変化があった10年間だったの?)

「一番の変化っていうのはやっぱり幸福の科学の主宰・大川隆法先生にめぐり逢えたっていうことかな」

(それはバンドの体験よりも大きいものだった?)

「いや、もうそんな比じゃないぐらいデカイこと!」

(今回の解散との関係は?)

「僕は関係ない、僕サイドから見たら。(中略)ほかの人たちはどういう風に見てるかねえ、それはわからない。」

(ファンの人にメッセージを)

「一番みんなに伝えたいことっていうのは、やっぱり今御釈迦様がこの地上に降りられていると、仏陀が下昇されてってことかなあ(笑)それも、この日本で。だからそれが大川隆法先生であり、ほんと先生に出逢えて…もう感無量です!」

ラストアルバム「PAN」収録の「幸福の生産者」等でもエル・カンターレを讃えていて、演奏も幸福の科学会員と行っており、さすがにもはやブルハの楽曲とは言えないものとなっている。

歌詞カードには「執着を捨てよ」という宗教的メッセージ?の英語のコラージュを掲載。
もちろん、これは大川が「太陽の法」などで書いている教えからきてるものだろう。(大川も自動書記で書かされたものらしいが)

同じく「PAN」収録のヒロトが「ヒューストンブルース」で神や天国を否定したことに対して、雑誌「FM STATION」で「宗教的に無知な部分の延長。ファンに申し訳ない」という旨のコメントをしている。

また、「Quick Japan vol.4(1995.10)」でもロックと宗教をテーマに河口への単独インタビューが行われた。

画像引用元:「Quick Japan vol.4」

が、完成した原稿が納得いかなかったため河口が勝手に原稿を持ち出し、掲載を拒否。
話し合いの末、掲載は見送られることになった。

同誌によると、ここでも河口のコメントは「解散の真相は単に宗教解散と言えるものではない」という内容で、一方、インタビュワーの印象は「深くつながっているのでは?」というものだったようだ。

このインタビューが全文公開されていれば、かなり貴重で興味深い内容だったろう。

河口は2009年に幸福の科学を支持母体とする「幸福実現党」から出馬したり(落選)、音楽活動を通して信仰を続けている。

ファンクラブ会長 亀岡寿江/オウム真理教

画像引用元:「Quick Japan vol.4」

ブルーハーツのファンクラブ「ブルーハーツ集団」の会長 亀岡寿江はファンクラブを辞め、オウム真理教に入信。
オウム真理教のグッズショップ「サティアン渋谷」で店長も務めていた。

彼女のインタビュー記事が上であげた「Quick Japan vol.4(1995.10)」に掲載されている。
顔写真もたくさん載ってるが、ここで載せるのは控えておきたい。年齢は当時29歳。

時期的に1995年10月頃というのはオウムが3月にサリン事件を起こし、すでに逮捕された後。
そんな中、全く悪びれず満面の笑みでインタビューに答える様子は異様に映るかもしれない。

その辺は次のような信者へのインタビュー集を読むと何となく理解できると思う。
(小説家 村上春樹と心理学者 河合隼雄の分析が面白い)

「約束された場所で」[Amazon]

一言で言ってしまうと、カルトの熱暴走を起こしていたのは麻原と幹部周辺で、同じ教団内でも一般信者とはあまりに温度差があり、信者自身、一連の犯罪行為は自分ごととして捉えられなかった節がある。

一般信者の声を聞くと、みんな善良な人という印象しかない。
(というか、一般人以上に善良で、それはそれで危うい部分ではあるけど)

亀岡も信仰面の考え方は引っかかるものの、普通に良い人だし、聡明だし、ブルハのことが本当に好きなことが伝わってくる。

オウム信者は「切実な何か」があって入信してる印象があるが、亀岡の場合「なんとなく面白そう」でフラッと入ってる点は珍しいかもしれない。

ブルハに関連したインタビュー内容を抜粋。

(亀岡さんの中ではブルハとオウムは近い存在なのか?)

「そうですね。私の中では根本的に同じですね。〜。例えば、その時代はメジャーデビューすることイコール、バンドはもう終わりだ、みたいな風潮があったじゃないですか。〜。ブルーハーツはそういうことを分かった上で、あえて業界の中に飛び込んで言ったと思うんですね。〜。内側から何かを変えてやろう、と思って。で、そういう意味で言えば、オウム真理教の言っていることと、ブルーハーツはすごく近いんですよ。」

(オウム真理教的な見方からいけば、甲本ヒロトはどんな存在?)

「もちろん現世的ではあるんですけど…でも、一歩も二歩も深い考え方をしている。徳は高いと思いますね。〜。”智慧”があるということでしょうかね。」

その他、(勧誘ではないとしつつ)河口に幸福の科学の本をもらったことや、出家前に河口にオウムはやめるよう諭(さと)されたことを話している。
(なので「河口が(亀岡以外の)ファンを勧誘していた」という「噂」は信ぴょう性が高い気がする)

現在の活動などは不明。

オウムの後継団体に「山田らの集団」があり、「ブルーハーツ集団」とネーミングセンスが同じことから「まさか亀岡が代表?」と思ったが違うようだ。
「山田らの集団」は公安が便宜的につけた名前らしい。

甲本ヒロトの中学時代の同級生 中川智正/オウム真理教

「サリン事件死刑囚 中川智正との対話」[amazon]

中川智正は1988年に入信したオウム真理教の信者で、麻原の主治医。
「カルトの熱暴走」が巻き起こっていた幹部側の人間で、一連の犯罪行為にも多数関わっている。

中川はオウム三大事件の一つ「坂本堤弁護士一家殺害事件」で妻と赤ん坊を殺害。
サリンの生成にも関わっており、計25人もの殺人を問われ死刑判決を受けた。

一連の犯行については昨年刊行された「サリン事件死刑囚 中川智正との対話」に詳しい。
(自分は中川のパーソナルな部分が気になって読んだのだが、その辺はあまり触れられてない。あと「緊急刊行」されただけあって、ちょっと編集が雑)

その中川は甲本ヒロトと同じ岡山出身で、岡山大学教育学部附属中学校の同級生である。
なので、同じく同級生として有名な浅草キッドの水道橋博士とも同級生。

同じ時、同じ場所に、のちのロックスターとお笑い芸人とテロリストが机を並べていたというのは感慨深い。

ヒロトと水道橋博士は交友があるが、ヒロトと中川に関しては不明。
ヒロトの実家はクリーニング店で中川の実家は洋服店という縁がありそうな共通点はあるが、今まで一度も触れていない、と思う。

水道橋博士は何度か中川についてラジオやブログで触れていて、TBSラジオ「小島慶子 キラキラ」(2010.4.2)の内容を載せてるブログがあったので引用させてもらう。

「水道橋博士が語る「同級生だった中川智正死刑囚に関する戦慄体験 | 後世に残したいラジオの話」

博士
「ちょっとディープですけど、これ笑い話ではなく本当の話なんですよ?あのー、1995年に、あのー、オウムのサリン事件があったじゃないですか」

「その時に、まぁ、麻原彰晃の主治医として、こうニュースになってた中川智正っていたんですね」

「まぁ死刑囚になりましたけども、彼は中学時代の同級生だったんですよ」

「で、その1995年にニュースを見てたらサリン事件が起きて、それで『今逃亡中』って出て『中川智正』って出たときに『あっ、俺と同い年。えっ!ひょっとして、中川智正って俺のあの同級生の!?』って思った時の僕のこの戦慄な思い?・・」

「と共にですね、僕の共通の友人のK君っていう人から電話がかかってきて「今ニュース見ているか?」って。『いや連日連日すごいじゃないか』って」

「その人も久しぶりなんですよ。中学出てからずっと会っていなくて」

「お前、芸能人なんかやっているわけだから、何とか中川をかばってやってくれ」みたいな話があって」

「『でもそんな今サリンだの何だのって言っているのに、そんなこと出来る訳ないじゃない』つって。『まさか中川智正・・』その、あだ名が『ケツ』って言ったんですね、中学時代のあだ名」

「『でもケツがまさかこんな事になるとは』って言ったとたん、そのK君が「失礼なことを言うな!中川智正はケツではない!ボージサットバ・バジラディッサ師だ!」って」

「ホーリーネームをスラスラスラって言ったんです。」

小島 「あっ、同じ学年に信者さんがもう一人いたんだ」

博士 「ええ。で、それでかばってくれっていう電話だったという」

小島 「なな、なるほど」

博士 「物凄く衝撃的でしょ?」

中川智正は2018年7月に死刑が執行(享年55歳)。

中川もオウム関連書籍を読むと、すごく良い人で、学生時代は神童とまで呼ばれていたらしい。
そして、人を助けるために医者になったにもかかわらず、入信直後、罪のかけらもない赤ん坊を素手で殺している。

1995年、甲本ヒロトはバンドメンバーに「宗教的に無知」と言われ、ファンクラブ会長に「ブルハとオウムは根本的に同じ」と言われ、中学の同級生が「カルトに狂ったテロリスト」と知った。

その時、何を思ったのだろうか。
安易に気持ちを推測するのもはばかれる。

確認しておくと、オウム関連の問題が明らかになったのは1995年。
ブルハの解散はそれ以前(93〜94年)に決まってるので、解散との関連性はない。

その他のメンバーと宗教について

これも一応簡単に。

ドラム 梶原徹也と宗教

ドラムの梶くんは阿含宗を信仰していて、そのことをデビュー時から公表している。
1987年のロッキングオンのインタビューでも、普通に「私は仏教徒ですから」と話している。

それとブルハの活動や解散がどう関わってるかは不明、というか特に関係ないと思う。
梶くんは今もドラムを続けていて、色々な媒体やバンドでちょくちょく見かける。

甲本ヒロトと宗教

なぜかよくわからないが、ヒロトも宗教との繋がりを目にする。
金光教?という情報も見かけた。

すでに書いたように宗教に批判的だし、本人も無信仰だと明言している。

真島昌利と宗教

ニックネームはすごく仏教的だが(マーシー=慈悲)、マーシーからも全く宗教への関心は見られない。
というか、ヒロトと同じくかなり否定的と思われる。

どう否定的なのか、さいごに少しだけ触れたい。

ハイロウズの歌詞にみる反宗教性と「欲望」について

デリケートな話題なので、あまり安易に結びつけるのはためらわれるけど、一つだけ。
これはブルハ・ハイロウズ関係なく個人的にずっと関心があるテーマでもある。

ハイロウズの歌詞は、やはり一連の宗教がらみのアレコレがあったからか、元々あった反宗教的な意識がより尖ってるように見える。

そこで一つキーワードとなってるのが「欲望」

元ファンクラブ会長の亀岡はインタビューでこう言っている。

外的条件との接触を少しずつ減らしていって、最終的に欲望が完全に断ち切れた状態が涅槃(ねはん)だと思うんですね。何があっても心が動かない。
〜。
絶対的な”自由” ”幸福” ”歓喜”が訪れると思いますね。
〜。
そしてずっとその状態が続くんだと思います。

オウム 、幸福の科学問わずだけど、宗教はまず「欲望」を悪や罪とみなす。
「利己心・エゴ・欲望を抑えろ」と説く。

そして天国やらユートピアやら、どこか遠いところに矛盾も苦悩もない完璧で素晴らしいビジョンを描く。

すごく素朴に疑問に思うのは、あれだけ自分の欲求に忠実に生きて、今・ここを楽しんで、なおかつ沢山の人を幸せにし続けているヒロトとマーシーのそばにいて、なんでそういう考えになるんだろう??ということ。

マーシー作詞の「笑ってあげる」。

裸になって 滝に打たれても
結局何にもわかりゃしないだろ
日々の煩悩と欲望の中に
しっかり確かな手応えがあるぜ

「一人で大人 一人で子供」

うんざりなんてしてて当たり前
絶望なんてしてて当たり前

こんな文章では雑すぎて、色々異論、反論あるだろうけども。

まるで宗教的なものへのカウンターとして、といっていいか分からないが、ヒロトとマーシーの歌には今と現実と人間をありのまま肯定する言葉が込められている。

関連記事