PCやスマホで音楽を聴く「PCオーディオ」が定着してきました。
「もっと良い音で聴きたい」という人も多いでしょう。

でも、最初は
「何から手をつければいいか分からない。」
「DAC? アンプ? ハイレゾ?」
「そもそもPCオーディオって?」
と色々疑問だと思います。

そこで、入門者向けにPCオーディオの基礎知識と基本的な構成を解説します。

自分自身、「外付けDAC、真空管ヘッドホンアンプ、サウンドカード、イヤホン、ヘッドホン」などある程度色々試してきたので、その経験から「どこからお金をかけるべきか?」を含めて紹介したいと思います。

Index

PCオーディオとは? 基本的な4つの構成要素

PCで音楽を聴くために必要な要素は次の4つ。
つまり、この4つが音質に関わる要素であり、音質アップを図る場合、この4つをそれぞれどうするか考えることになります。

① ファイル音源 :
apple musicやCDをPCにリッピングした(取り込んだ)デジタル音楽データのこと。
② DAC(Digital to Analog Converter):
デジタル音声信号をアナログ音声信号に変換(コンバート)するパーツ。
③ アンプ :
スピーカー等で鳴らすためにアナログ信号の電力を増幅するパーツ。
④ スピーカー・イヤホン・ヘッドホン :
アナログ信号を音に変えて出力するパーツ。

(「DDC」というのもありますが、とりあえずここでは「DACと同じようなもの」という理解で良いかと。あと似たような名前の「DAP」は「Digital Audio Player」の略で携帯音楽プレーヤーのことです。)

ファイル音源以外の3つの機能はすでにどのPCやスマホにも備わっています。
じゃないと音楽が聴けないというか、音が鳴らないので。

でも、PCやスマホの音質に関わる機能の性能は高くなく、オーディオ的に高音質とは言えません。

通常のPC

そこで、あとから追加でそれぞれの性能をあげようとする試み・製品が「PCオーディオ」と言えます。

PCオーディオ

また、必ずしも全部別々の製品というわけではなく、「DAC内蔵アンプ」や「アンプ内蔵スピーカー」などもあります。

記事冒頭で引用させてもらった画像(DENON「DA-310USB」)はDACとヘッドホンアンプ機能がセットになった製品です。
最近はセットになってるのが主流かと思います。

PCオーディオの主旨がわかったところで、もう少し詳しく一つ一つ見ていきます。

【PCオーディオの構成要素1】 ファイル音源

【PCオーディオの構成要素1】 ファイル音源

ファイル音源において音質に影響する要素は主に次の3つです。

①サンプリング周波数/ビット数44.1kHz /16bit、192kHz /24bit
②音楽データの圧縮方法wav、flac、mp3
③音楽データの圧縮率128kbps、320kbps、1000kbps

いきなり小難しくなりそうですが、シンプルに説明します。

【1−①】サンプリング周波数/ビット数

簡単に言うと、
「生の音・アナログオーディオ信号をどれくらいきめ細かくデータ化しているか」を表しています。

ハイレゾとCDの違い

写真や液晶の「解像度」でイメージすると、わかりやすいです。

解像度が高いと実際の見た目の再現性が高く、キレイ。
逆に低いと再現性が低く、汚い。
そんな感じです。

CDのサンプリング周波数/ビット数は「 44.1kHz 〜 48kHz /16bit 」。

「ハイレゾ」と言うのはこの「サンプリング周波数/ビット数」が優れているデータのことを言います。
例えば、「 96kHz /16bit 」や「 192kHz /24bit 」など。

「ハイレゾリューション」という言葉通り、「高解像度の音」ということです。

【1−②】音楽データの圧縮の仕方

どれくらいデジタル音楽データを圧縮するか、もしくは圧縮しないかという違いです。
大きく分けると3種類のフォーマットがあります。

圧縮方式形式説明
非圧縮WAV、AIFF圧縮しない方式
ロスレス(可逆)圧縮FLAC、Apple Lossless保存してる時は圧縮し、再生時に復元する方式
ロッシー(非可逆)圧縮MP3、AACデータの一部を間引いて圧縮する方式

「ロスレス(可逆)圧縮」というのは、例えば、zipファイルは保存しておく時は圧縮されてて、使う時は解凍して元に戻りますよね。
そんなイメージで、文字通りロスのない方式。取り込む前のデータをそのまま復元できるので音質的に望ましいんです。

じゃあ、「ロッシー(非可逆)圧縮」は再生時にも元に戻らないの?と言うと、そう戻りません。
データの一部を間引いて(ロスして)圧縮するのが「非可逆圧縮」です。

下の表のように、非圧縮、ロスレス圧縮だと音質が良くなり、その分データは重くなります。
これも画像と同じですね。解像度の高いキレイな画像はその分重い。

圧縮方式形式音質容量
非圧縮WAV、AIFF
ロスレス(可逆)圧縮FLAC、Apple Lossless
ロッシー(非可逆)圧縮MP3、AAC

もう一つ知っておきたいポイントが各フォーマットの「汎用性」
つまり、そのフォーマットが多くの再生デバイスに対応してるかどうか?と言う点です。

例えば、「Apple Lossless」は名前の通し、Appleが作った規格なので汎用性は高くありません。
対して、「FLAC」はオープンソースで、色々なメーカーのデバイスに対応しています(ハイレゾの標準規格もFLAC)。

圧縮方式・フォーマットの選び方

どれにするかはその人の環境や好みで変わってきますが、特に理由がなければ「FLAC」や「MP3、AAC」と言った普及してる規格を選ぶと安心です。

非圧縮(wav)かロスレス圧縮(flac)だと、ほとんど音の違いは分からないので、ロスレス圧縮の方が一般的だと思います。

音質については、次の「圧縮率」も関係してきます。

【1−③】音楽データの圧縮率(ビットレート)

「ビットレート」と言うのは「1秒ごとに転送されるデータ量」のことです。
音楽ファイルでよく使われる単位は「kbps」。

これも数値が上がるほどデータ量が増えるので、音質は良くなりその分容量が重くなります。

wav、flacの場合はビットレートは自動で割り当てられます。
MP3、AACで取り込む場合は再生ソフトの設定でいくつかの数値の間から自分で選択できるはずです。

圧縮方式形式ビットレート
非圧縮WAV自動(1440kbps)
ロスレス(可逆)圧縮FLAC自動(600〜1000kbps)
ロッシー(非可逆)圧縮MP3、AAC32〜320kbps

圧縮方式・ビットレートの選び方

どれを選ぶかはやはり自分の耳で試すのが一番ですが、一般的なのは256kbps・320kbps。

128kbpsだとさすがに気になるレベルで音質が落ちます。
256kbps、320kbpsになると十分な音質だし、パッと聴いて違いがわかる人は少ないと思います。

apple musicは256kbps、spotifyの有料プランは320kbpsですね。

mp3の320kbpsとFLACも違いは分かりにくいと思いますが、HDDに余裕がある場合やお気に入りの音源はFLACで取り込むのも良いかと思います。

【PCオーディオの構成要素2】 DAC

【PCオーディオの基本構成2】 DAC

[出典] FOSTEX PC100USB(amazon)据え置き型/USB DAC内蔵/ヘッドホンアンプ

ここまで書いてきたデジタルの音楽データを、アナログの音声信号に変換するパーツがDAC (Digital to Analog Converter)

「USB DAC」と言う製品をよく見かけるのは、PCとの接続にUSBを使うのが標準となっているからです。

DACは大まかに分類すると次の3つ。

据え置き型DAC屋内でPCに繋ぐタイプ。
ポータブル型DAC主に持ち運び用でスマホにつないで使うタイプ。
ポータブル向けでもUSBでPCにつないで使えるものもある。
アンプ機能付きDAC次で説明する「アンプ」機能も装備したタイプ。アンプとDAC、単体のも見るが、セットになってる製品も多い。

(自作PCで使う「サウンドカード」も役割的にはDACと同じ)

もちろん、「据え置き型 × アンプ機能付きDAC」や「ポータブル型 × アンプ機能付きDAC」という組み合わせもあります。

DACの選び方は、まずは使い方や機能・見た目・値段で絞ることになると思います。
音質面での比較は、量販店で試聴できるのもありますが、イヤホンなどに比べると数は少ないです。
(オーディオ専門店だと違うかもしれません)

ネットで高評価だったり、値段が高くても、自分の嗜好に合うとは限らないのが難しいところ。
ある程度「予想」で買う場合が多い気がします。

【PCオーディオの構成要素3】 アンプ

【PCオーディオの基本構成3】 アンプ

[出典] FiiO Q1 MarkⅡ(amazon)ポータブル型/ヘッドホンアンプ/USB DAC内蔵/USBでPCにも接続可

アンプはスピーカーなどを十分な音量で鳴らすためにアナログ音声信号を増幅するものです。
いくらDACで信号を整えても音量が小さいとイマイチですからね。

特にスピーカー、イヤホンの上位機種になるほど、十分な駆動力を得るために必要になってきます。

アンプもいくつか分類すると次の5つ。

据え置き型アンプ屋内でPCに繋ぐタイプ。
ポータブル型アンプ主に持ち運び用でスマホにつないで使うタイプ。
DAC機能付きアンプDAC機能も装備したタイプ。
スピーカー用アンプスピーカー向けのアンプ
ヘッドホン用アンプヘッドホン向けのアンプ

これも組み合わせは色々あります。
「据え置き型 × スピーカー用アンプ 」や「ポータブル型 × DAC機能付き × ヘッドホン用アンプ」など。

ヘッドホン向けの場合、だいたい「ヘッドホンアンプ」と書いてあります。
ヘッドホンアンプ以外の一般的なアンプは基本的にスピーカー向け。

もちろんアンプにイヤホンジャックがついてれば、ヘッドホン用じゃなくてもヘッドホンが使えますが、音質的には特化したもの方が望ましいようです。

一般的なスピーカー向けのアンプで、ヘッドホン用の回路も備えてる場合はちゃんとカタログなどでアピールしてるのを見ます。

【PCオーディオの構成要素4】 スピーカー・イヤホン

【PCオーディオの基本構成4】 スピーカー・イヤホン

[出典] JBL Pebbles(amazon)アクティブ(アンプ内蔵)スピーカー/USB DAC内蔵

これは分かりやすいですね。
一つだけ補足すると、スピーカーには2種類あります。

アクティブスピーカーアンプ機能が内蔵したスピーカー
パッシブスピーカーアンプ機能が内蔵していないスピーカー

PC用のUSB(DAC内蔵型)アクティブスピーカーもあって、手軽に良い音で聴きたいと言う人にオススメ。
値段的にもサイズ的にも手頃な商品が色々あります。

また、イヤホンにしろ、スピーカーにしろ家電量販店などで試聴できるものが多いです。
試聴して「この音で聴きたい!」と思ったのを買えばいいので、選び方がシンプルで分かりやすいです。

さいごに。PCオーディオで最初にお金をかけるべき要素は?

ザッとPCオーディオの全体像を解説しました。

その上で音質的に重要な要素をあげると次のような感じです。
(ファイル音源は一般的な256kbps以上という前提で)

イヤホン・スピーカー > DAC ≧ アンプ > ファイル音源

実体験から言っても、一般的にもやはり一番重要なのはイヤホン、スピーカー
あまり難しいポイントはないので初心者も選びやすいと思います。

もし、そこそこ上位機種にするのであれば、その性能を十分に発揮するために、ゆくゆくはDACやアンプも揃えたいところです。

次にDAC、アンプ
アンプ付DACのようにセットになっている製品も多いので合わせて検討すると良いかと思います。

最後にファイル音源
まずはapple musicやMP3、AACの256kbpsで十分。

スマホ付属のイヤホンしかないときにハイレゾ音源は早いと言うか、そもそもイヤホンが対応してないので意味ありません。
ハイレゾに対応した各パーツが揃ったら、ハイレゾのサンプル音源を聴いてみて、買う価値があるか考えるのが良いんじゃないでしょうか。