ある音楽に対して「懐かしい」とコメントされているのを見かける。
そういうコメントを聞くと、自分はいつもどこかモヤモヤとした気分になる。
少し前にも何度かそういったことがあったので、その理由について改めて考えてみた。

ちなみに「懐かしい」とコメントされていたのはハイスタとラブサイケデリコ。

ハイスタは昨年末、18年ぶりにアルバムを発売し、ライブを敢行。
ラブサイケデリコは年明けにvocalのkumiが結婚(再婚)を公表。
そのネットニュースでのコメント欄などで「懐かしい」という声が挙がっていた。

ラブサイケデリコに関してはコンスタントに活動を続けているので、沢山の人が懐かしがった理由が一瞬わからなかったが、おそらくデビューアルバムがミリオン超えしたので、その頃だけよく聴いていた人が「懐かしい」と感じたのだろう。

「懐かしい」にモヤモヤする2つの理由

モヤモヤするというのは、自分は音楽を聴いて懐かしむことがないから、というのがまずある。
経験がないわけではないけど、ほとんど全くない。

一応補足すると、これは「ノスタルジックな雰囲気の歌を聴かない」という意味ではなく、「曲を聴くことで曲を聴いてた過去を懐かしむことがない」という意味。

なぜ懐かしむことがないのか?人の「懐かしい」でモヤモヤするのか?
考えてみると、主に次の2つの理由があるように思う。

理由1. 自分は一旦好きになった音楽はずっと聴き続ける

「懐かしい」と感じるということは、一時期ある程度聴き込んでいて、そこから空白期間が空く、つまり、その人にとって「リアルタイムで聴く音楽ではなくなっている」ということだろう。

自分はある程度聴き込むほど好きになると、ぱったり聴かなくなるということがほぼない。
特に高校以降はその傾向が強く、高校の時にブレイクしたハイスタもラブサイケデリコも以来十余年「リアルタイムな音楽」として聴き続けている。

そして、ここ数年すごく感じるのは、良い音楽は全然飽きないし、全く色褪せない。
それどころか年々凄みを増していくということ。

j-popでもっと古いところだと小沢健一や川本真琴。
小中学校の頃、何気なく聴いてた曲が大人になっても新鮮に聴き続けられるし、改めてその凄さに衝撃を受ける。一度ではなく何度も。

だから、「モヤモヤする」というのは、「良い音楽はずっと聴き続けられる強さがあるのに」と、どこか釈然としない気持ちになるのだと思う。

単純にずっと好きなミュージシャンが、他の人にとっては「過去の遺物」に成り果てているのも寂しい。
その2つの感情が「モヤモヤ」の大部分を占めているように思う。

あと、習慣としてずっと聴き続けられているのは音楽の聴き方も関係している。
自分はpcに入れた音楽をよく総シャッフルランダム再生で聴いている。

アルバム単位で選曲&再生しかしない場合は、再生回数も偏ってくるし、次第に聴かなくなるアルバムも出てくるだろう。
ランダムに総シャッフルで聴いていると、最近のアルバムも20年前のアルバムも関係なく、リアルタイムな音楽としてストックしている感覚になるし、実際コンスタントに再生される。

なので、ライブラリに一旦ストックしたミュージシャンは「過去の音楽」になりにくいというのがある。

理由2. 「懐かしい」と感じるのが苦手

これは本当に個人的な感覚の話で、なかなか伝わりにくいかもしれない。
感覚として近いと思うのが、小説家の三島由紀夫の「音楽を聴くのが苦手」という話。

「音楽を聴くこと自体が苦手」というのも一般的には理解しにくい感覚だろう。
音楽を聴くことも懐かしむことも普通に考えれば悪い感情を与えるものではない。

三島が音楽が苦手な理由は確か、
「絵や文章の鑑賞は自分から能動的に関わっていくものだが、音楽は受動的に受け入れるしかなく、そこに不安と恐怖を覚えるから」
というものだった。

自分の場合、恐怖を覚えるほどではないけど、懐かしさを感じると、何かザワザワと落ち着かない気分になり、抵抗を感じる。
「感傷」という文字通り、感覚が傷つけられるようで、すぐに断ち切りたい、できるだけ遠ざけていたい思いに駆られる。

他にも例えば、ジェットコースターやお化け屋敷のスリルを楽しめる人もいれば、ただの恐怖でしかない人もいる。
自分はこれも完全に後者なので、わざわざお金と時間をかけて怖い思いをすることが1ミリも理解できない。

それと同じように音楽にしろ写真にしろ、過去のものを思い出して懐かしむという行為を抵抗なく(むしろ嬉しいことのように)できることが体感としてよく分からないのである。

さいごに

個人的に「懐かしい」にモヤモヤする理由について書いてみた。
だから何だ、という話だけど、そういう音楽好きもいるんだと思ってもらえたら。

途中で触れた「総シャッフルランダム再生」についてもまた別記事に書いた。
これは人にもお勧めできる聴き方なのでよかったらぜひ。