ビクター犬「ニッパー」のロゴの由来と2つの謎

「Nipper(ニッパー)」とは主にビクターのロゴとして有名な蓄音機を覗き込んだ犬の名前です。
この記事ではロゴの由来やニッパーの謎(後述)を中心にニッパーについて紹介します。

関連グッズも色々出ているので記事後半で紹介しています。
(↑画像は自身で所有しているニッパーのブリキの看板で、これは今流通してるかは不明です)

ビクター犬「ニッパー」のロゴの由来

ニッパーの絵のタイトルは「His Master’s voice」で、直訳すると「彼(犬)の主人の声」。
タイトルから犬が蓄音機で飼い主の声を聴いてるシーンが描かれたものだとわかります。

以下、ロゴの由来をビクター公式サイトから引用。

ビクターマークの原画は、1889年にイギリスの画家フランシス・バラウドによって画かれました。
フランシスの兄マーク・H・バラウドは「ニッパー」と呼ぶ非常に賢いフォックス・テリアをかわいがっていましたが、彼が世を去ったため、彼の息子とともにニッパーをひきとりフランシスが育てました。たまたま家にあった蓄音器で、かつて吹き込まれていた兄の声を聞かせたところ、ニッパーはラッパの前でけげんそうに耳を傾けて、なつかしい主人の声に聞き入っているようでした。

そのニッパーの姿に心を打たれたフランシスは早速筆をとって一枚の絵を描き上げました。
その時の蓄音器は録音・再生ができるシリンダー式でしたが、その後円盤式に画き変えられました。
そして、「His Master’s Voice」とタイトルをつけたのです。

亡き主人の声を懐かしそうに聞いているニッパーの可憐な姿は、円盤式蓄音器の発明者ベルリナーを感動させ、彼はこの名画をそのまま商標として1900年に登録しました。それ以来この由緒あるマークは最高の技術と品質の象徴としてみなさまから深く信頼され、愛されています。

「his masters voice」とは「彼の(亡くなった)飼い主の声」ということですね。
ちなみにニッパーという犬の名前は「人の足を噛む(=nip)クセからつけられた」とのこと。

この忠犬ハチ公のような心温まるストーリー性もロゴの魅力の一つで、割と有名かと思います。

ロゴの由来で気になるところ

由来を読んで一つ気になるのは、蓄音機の種類

「その時の蓄音器は録音・再生ができるシリンダー式でしたが、その後円盤式に画き変えられました。」

↑サラッと書かれてますが、ここは重要な部分で。

「シリンダー式 = フォノグラフ(円筒型蓄音機)」というのは、かのエジソンが作った個人録音と再生ができる蓄音機。

「円盤式 = グラモフォン(円盤型蓄音機)」というのは、エミール・ベルリーナが作ったスタジオ録音した音源を再生する蓄音機。
(エミール・ベルリーナはこの記事を読み終えるまでは覚えておいて欲しい重要人物。)

商標登録された「his masters voice」にかかれている円盤式は、スタジオ録音しかできないタイプ。
つまり、今一般的に目にする「His Master’s voice」は、実は主人の声を聴いている姿とは言えないのです

ビクター犬「ニッパー」にまつわる2つの謎

一つは上で書いたように「なぜ絵の主題にそぐわない円盤式蓄音機に描き換えられたのか?」

もう一つは「(普通ロゴは一つの企業で使われるものなのに)なぜニッパーロゴは複数企業で使われているのか?」という点です。

❶ 絵の主題にそぐわない円盤式蓄音機に描き換えられた理由

一言で言うと、「仕事上の事情」があったようです。

簡単に説明すると、まず画家のフランシス・バラウドはニッパーの絵を販売しようとフォノグラフ(円筒型蓄音機)を作ったエジソンに話を持ちかけました。
しかし、この話はエジソンに断られ、破談。

フランシスが最初に描いたフォノグラフ(円筒型蓄音機)。ニッパー (犬) | Wikipedia

次に、グラモフォン(円盤型蓄音機)を売る(ベルリーナ・グラモフォン社を親会社とする)グラモフォン・カンパニーに持ちかけたら、「フォノグラフではなく、グラモフォンに描き換えたら買い取るよ」と。
そこで、フランシスは買い手の要望通り、グラモフォンに描き換えたということです。

グラモフォン(円盤型蓄音機)に修正後の絵。ニッパー (犬) | Wikipedia

感動的なストーリーの裏側に、そんな大人の事情もあったんですね。

[参考]
「Nipperは主人の声を聞いていたか? ―His Master’s Voiceからのメッセージ―」 名古屋学院大学リハビリテーション学部 増田 喜治

❷ ニッパーのロゴが複数の企業で使われている理由

企業の変遷・統廃合などがあまりにややこしかったので、ざっくりまとめます。
今ロゴの使用を確認できるのは、次の2つ。

  • ビクター(ビクターエンタテインメント)
  • HMV

なぜ直接関係ない2つの会社でニッパーロゴが使われているのか?

もう一度、ロゴの発祥を確認すると、「His Master’s voice」はグラモフォン・カンパニー(英)というレコード会社で商標登録されました(1899年)。

また、グラモフォン・カンパニー(英)の親会社、エミール・ベルリーナの、ベルリーナ・グラモフォン社(米)でも商標登録されています(1900)。

いずれにしろ大元を辿ると親会社のベルリーナ・グラモフォン社に行き着き、ビクターもHMVもベルリーナ・グラモフォン社がルーツとなっています。

つまり、ロゴのモチーフが同じなのは、1世紀以上前の先祖的な会社が同じだったからということです。

ニッパーロゴを使用するビクターとHMVについて

Victor ビクター

Victorブランドについて|Victor

Victorは沿革を辿ると、グラモフォン・カンパニーが元になってます。

グラモフォン・カンパニーは1901年にアメリカのレコード会社「ビクタートーキングマシン」に派生。
1929年にRCAがビクタートーキングマシンを買収し、RCAビクターが誕生。
RCAの日本法人として「日本ビクター」が設立(現 JVC ケンウッド)。

[参考]
「日本ビクター  | Wikipedia」
「レコードレーベルあれこれ(17)~ビクター周辺の会社について | SUZUKI GROUP」

以前はビクターの家電製品でニッパーのロゴを見かけましたが、現在よく見かけるのはJVC ケンウッドのエンタメ部門である「ビクターエンタテインメント」。

ビクターエンタテインメントは近年ますますニッパーでのブランディングに力を入れているようです。

例えば、ニッパーの訴求を目的として、ビクターに所属するアーティストが1年間アンバサダーを務めるニッパー大使を毎年任命したり、2015年には2月8日を「ニッパーの日」と登録してます。

ニッパー大使 初代 山崎あおい(シンガーソングライター)
2代目 山内惠介(演歌歌手)
3代目 KEYTALK(ロックバンド)
4代目 吉田凜音

ニッパーは音楽フェス「ビクターロック祭り」でもマスコットとして活躍。
ビクターエンタテイメント所属アーティストのCDジャケのモチーフにもなってます。

「Music For Nipper(2009)」カヒミ・カリィ

「海賊盤(2016)」中村一義

いまいち関係性が掴めてないんですが、ソフトとしてはRCA victorのレコード盤でもニッパーが記載されてるのを見かけます。

また、アメリカのRCAレーベル所属のアーティストもニッパーをモチーフにしたCDをリリースしています。

「Phrazes for the Young(2009)」Julian Casablancas

HMV エイチ・エム・ブイ

素材ダウンロード/HMV ONLINE リニューアル情報

CDショップのHMVも当初グラモフォン・カンパニーの一ブランドで、「HMV」は「His Master’s Voice」の頭文字が店名となってます。

抽象的で目立たないので気づかない人も多そうですが、HMVのロゴタイプの左にはニッパーのロゴマークもあります。

グラモフォン・カンパニーは現EMIで、現在のHMVとは資本関係にないですが、HMVブランドは継続して使用されているということです。

また、HMVは現在ローソンに吸収合併。
企業全体で音楽に特化していないせいか、HMVもあまりニッパーを活用したブランド戦略をするつもりはないようです。

Webサイトを見てもニッパーの姿はなく、online shop、実店舗ともにニッパーグッズを取り扱っていません。

同じロゴを掲げている2社ですが、ニッパーに対する「温度感」はかなり差を感じますね。

新作もコンスタントにリリース。ニッパーグッズが購入できるショップ

色々なネットショップで購入できますが、代表的なのは公式グッズを扱っている「JVCネットワーク株式会社」のオフィシャルストア。

ニッパー オフィシャルストア | Jamaru [ジャマル]

amazonやタワレコオンランショップでもTシャツやステッカー、マグカップなど多数のグッズが取り扱われてます。

ビクター犬 ニッパー | amazon
ここでしか買えない限定グッズも多数【タワーレコード オンライン】

実店舗だと「JVCネットワーク株式会社」HPで取り扱い店舗を確認できます。

最近、自分が購入したものだと陶器の置物。
適度なサイズ感と絶妙な無表情さがよく、陶器製というのも日本らしくて気に入ってます。

ただ、ニッパーグッズの中には無表情すぎて微妙なものも(端的に言うとなんか怖い…)。
ニッパーグッズはそこの加減が気にいるかどうかのポイントになる気がします。

さいごに

記事内容のまとめると、

  • 「His Master’s voice」は亡き飼い主の声を聴くニッパーの姿が描かれている。
  • 事情により、商標登録された絵の蓄音機は個人録音ができない「グラモフォン(円盤型蓄音機)」。
  • ニッパーはビクターとHMVのロゴとして使用されている。
  • 同じロゴが使用されている理由は、ビクターとHMVのルーツが同じベルリーナ・グラモフォン社のため。

自分が初めてニッパーのロゴが入った製品を買ったのは、20年近く前のビクターのビデオデッキでした。
ビクターの製品を選んだ理由は、単純にニッパーのロゴが気に入ったから。

当時は、ロゴの由来やニッパーという名前すら全く知らず。
それでも、ロゴの雰囲気だけでメーカーはビクター一択でした。

この記事では、由来について書いてきましたが、純粋にビジュアルだけでも魅力的なロゴだと思います。

最近のJVC製品にはニッパーがいないので、今後また復活してくれたらと思ってます。

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