
唯一無二のロックンロール・コンビ、甲本ヒロト(Vocal)と真島昌利(Guitar)。
2人のメジャーデビューからの活動期間は30年を超えました。
きっと「クロマニは知ってるけど、ブルハ?ハイロウズ??」という人も多いと思うので、ヒロトとマーシーの主なバンド活動について紹介します。
各バンドの特徴や違いについてもまとめているので、2人をもっと深く知るキッカケにしてもらえればと思います。
甲本ヒロト プロフィール
本名 | 甲本 浩人(こうもとひろと) |
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愛称 | ヒロト |
誕生日 | 1963年3月17日(2019年現在56歳) |
出身 | 岡山県岡山市 |
心の奥の方に届く歌声と全身全霊でロックする姿が多くの人を揺さぶり続けているボーカリスト。
ロックDJ、大貫憲章はブルハとハイスタを日本のロックの礎を築いた「双頭の鷲」と形容。
そのハイスタの横山健もブルハに多大な影響を受けていて、kenband x クロマニで対バンした際にMCで「ロックン・ロールの人間国宝」と称えてました(多分マーシーも含めて)。
そんな賞賛の嵐を受け続けて、本人は「ずっと世間の過大評価に悩まされている」らしいですが、むしろまだ過小評価とも思えます。
作詞作曲も行い、だいたいどのバンドでもマーシーと半分ずつ作ってます。
楽器は曲によってハープやギターを演奏。
音楽のルーツは、
ビートルズやローリング・ストーンズなどの50’s60’sロック。
マディ・ウォーターズ、チャック・ベリー、オーティス・レディングなどの黒人音楽、ソウル、リズム&ブルース。
ピストルズ、クラッシュなどの初期パンクバンドの名前がよく挙がります。
真島昌利 プロフィール
本名 | 真島昌利(ましま まさとし) |
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愛称 | マーシー(学生時代〜ブルハ以前はマッシー) |
誕生日 | 1962年2月20日(2019年現在57歳) |
出身 | 東京都日野市 |
「長髪、バンダナ、切れ目の入ったTシャツ」というスタイルがトレードマークのギタリスト。
この格好からか、あまりイケメンというイメージはなさそうですが、実はかなりの男前だと思います。
特に若い頃の写真をみると、ハッとする程カッコいい。
一見クールな印象ですが、曲や歌詞からは熱く情熱的な一面もうかがえます。
中原中也などの詩人やケアルックといったビート文学が好きというのも有名。
2人の趣味が歌詞によく登場するのは、全バンド共通した特徴ですね。
(マーシー→小説のタイトル、ヒロト→バイクなど)
リードボーカルを務める曲やバンドもあり、ブルージーで渋い歌声もめちゃくちゃカッコいいです。
ブルハなら「休日」、ハイロウズなら「キャサディ・キャサディ」がオススメ。
音楽のルーツはやはりヒロトと同じく、50’s60’sロックやR&B、初期パンクです。
ヒロトとマーシーのバンド活動遍歴 略表
共通してるのはブルーハーツ、ハイロウズ、クロマニヨンズの3つです。
甲本ヒロトのバンド遍歴 略表
メジャーデビュー前 | |
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ラウンド・アバウト (1980〜1982) | 学生時代に初めて組んだバンド。 |
ザ・コーツ (1982〜1984) | アマチュア時代に組んでいたモッズ・バンド。 |
メジャーデビュー後 | |
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ザ・ブルーハーツ (1985〜1995) | ヒロト&マーシー、1つ目のバンド。 |
ヒューストンズ (1995) | ブルハの活動休止中に組んだバンド。 |
ザ・ハイロウズ (1995〜2005) | ヒロト&マーシー、2つ目のバンド。 |
ザ・クロマニヨンズ (2006〜) | ヒロト&マーシー、3つ目のバンド。 |
真島昌利のバンド遍歴 略表
メジャーデビュー前 | |
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ジョニー&スリー・クール・キャッツ (1976 〜?) | 学生時代に初めて組んだバンド。 |
ザ・ブレイカーズ (1980〜1985) | アマチュア時代に組んでいたモッズ・バンド。 |
メジャーデビュー後 | |
---|---|
ザ・ブルーハーツ (1985〜1995) | ヒロト&マーシー、1つ目のバンド。 |
ザ・ハイロウズ (1995〜2005) | ヒロト&マーシー、2つ目のバンド。 |
ザ・クロマニヨンズ (2006〜) | ヒロト&マーシー、3つ目のバンド。 |
ましまろ (2015 〜) | 真城めぐみ、中森泰弘との3人組バンド。 |
ブルーハーツ・ハイロウズ・クロマニヨンズの5つの違い
ざっくりとですが、大まかな違いを5つ紹介します。
メンバー(ベース・ドラム)の違い
ハイロウズは正式メンバーとしてキーボードも加わります。
ザ・ブルーハーツ | 河口純之介 ベース/梶原徹也 ドラム |
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ザ・ハイロウズ | 調先人 ベース/大島賢治 ドラム/白井幹夫 キーボード |
ザ・クロマニヨンズ | 小林勝 ベース/桐田勝治 ドラム |
ブルハだけ他のメンバー(河ちゃん・梶くん)の存在感が大きい、というかキャラが立ってるのも大きな違いだと思います。
クロマニの小林・桐田(コビー・カツジ)は、ハイロウズの調・大島・白井(べっさん・おーちゃん・ミッキー)に比べるとファンに認知されている印象がありますね。
作詞作曲の違い
全バンド、作詞作曲はヒロトorマーシーで、2人がだいたい半分ずつ作ってます。
ブルハの場合は数は少ないですが、ベース河口、ドラム梶原の曲もあります。
作詞作曲を分担せず基本的に一人でやるのは全バンド共通してますね。
リードボーカルの違い
クロマニはヒロトのみ。ハイロウズは数曲マーシーも歌ってます。
ブルハはやはり数は少ないですが、ヒロト以外のメンバー全員のリードボーカル曲があります。
また、マーシーはブルハ時代は自分で歌ったソロアルバムを4枚出しています。
歌詞の作風の違い
よく言われるところでは、
ブルハは若者の代弁者的、反社会的なメッセージ性の印象が強い。
ハイロウズ、クロマニは全体的にシュールでナンセンスな歌詞になる傾向があります。
アルバム・曲の時間の違い
ブルハは短め(30分台)から長め(50分台)まで。ハイロウズは全体的に長め(40分〜60分)。
クロマニは30分台が多く、全体的に一番短め。
なので、ライブでは他のアルバムの曲をやることが多いです。
甲本ヒロト メジャーデビュー前のバンド
メジャーデビュー前の主なバンド活動は2つ。
ラウンド・アバウト (1980 – 1982)
地元岡山で高校3年生の時に同級生と組んだバンド。
そこでヒロトは初めてのオリジナル曲「ジャンピン・ジャップ 337」を作ります。
(タイトルは「日本人が飛ぶ」と3・3・3拍子から)
地元、山陽放送のコンテストに出場し、その時は違うメンバーの曲で「特別審査員賞」を受賞。
日本テレビのワンコーナーにも出演し、後楽園ホールで「ジャンピン・ジャップ 337」を披露しています。
サラッと書いてますが、初めて作った歌でいきなり全国放送って、やはりエピソードがぶっ飛んでます。
ザ・コーツ (1982 – 1984)
ラウンド・アバウトの後身バンド / モッズ・バンド。
モッズというのは1950-60年代にイギリスで流行した音楽やファッションのカルチャーのことで、細身の3つボタンのスーツやパーカー、ベスパ(バイク)などのアイテムが特徴です。
コーツはそんなモッズモッズしてなかったらしいですが、この頃のヒロトは細身のスーツ姿で歌ってます。
すでにモッズシーンで注目されるバンドで、ブルハ1st収録の「NONONO/少年の詩/ロマンチック/人にやさしく(元のタイトルは『がんばれのうた』)」はコーツ時代の曲です。
真島昌利 メジャーデビュー前のバンド
マーシーもメジャーデビュー前の主なバンド活動は2つ。
ジョニー&スリー・クール・キャッツ (1976 – ?)
中学2年の時に池袋西武のバンドコンテストに出場するために組んだバンド。
マーシーはボーカル兼ギター。
バンド名はビートルズがカバーしたコースターズの「スリー・クール・キャッツ」から。
「ジョニー」はメンバーが4人いたため追加した名前で、特に誰がジョニーかは決まってなかったそうです。
「ジョニーは戦場に行った」や「南からきたジョニー」など後のマーシーの曲にもジョニーは出てきますね。
ザ・ブレイカーズ (1980 – 1985)
1980年、高校卒業後に組んだジョニー&スリー・クール・キャッツの後身バンド / モッズ・バンド。
この時もマーシーはボーカル兼ギターで、スーツにリーゼントというブルハ以降とは全く違うファッションでした。
ブレイカーズもすでにヒロトのコーツと共にシーンで一目置かれる存在で、ソロの名曲「アンダルシアに憧れて」はブレイカーズ時代の曲です。
コーツ、ブレイカーズの曲はyoutubeで上がってますが、やっぱり二人とも突出してますね。
クオリティがずば抜けてるとかじゃないんだけど、とにかく別格。
そして、その2人が組んだのがブルーハーツ。
ブルハが圧倒的な爆発力を発揮したのもうなづけます。
ザ・ブルーハーツ (1985 – 1995)
モッズ時代に交友があったマーシーがヒロトを誘い、2人を中心に1982年に結成。
バンド名は「どんな音楽か想像がつかないような名前」で、特に意味はないそうです。
ブルーハーツもインディーズ時代から注目を集める存在で、1985年、満を待して「リンダリンダ」でメジャーデビュー。
ヒロトが歌番組「夜のヒットスタジオ」で「見たこともないような歌い方」で歌った「リンダリンダ」は伝説になっています。
その後も「TRAIN TRAIN・情熱の薔薇」などヒット曲を飛ばし、3rdアルバム「TRAIN TRAIN」は50万枚を超えるセールスを記録、国民的な人気を博します。
とりわけ、ストレートで反骨的、同時に温かくてやさしい歌詞は若者の共感を呼びます。
当時、「アングラで怖いイメージ」だったパンクに「やさしさ」を持ち込んだのはブルハの一つの大きな発明でした。
また、学歴社会など窮屈な価値観とバブルの物質的な幸せを求める風潮が幅を利かせている中で、ブルハの歌う「精神の自由」は今よりずっと力強く響いたでしょう。
ブルハがただの人気バンド以上の革命的なインパクトを与えたのは、そんな時代背景もあったからだと思います。
同時に時代性を超えた普遍的な力を合わせ持っていたから、ずっと色褪せないのでしょう。
ブルーハーツのおすすめアルバム3選
2人のバンドの曲はspotifyなどで配信してないので、レンタルや購入する際の参考にしてみてください。
個人的にヒロト&マーシー作品に関してはフルアルバムから入るのをお勧めします。
1st「THE BLUE HEARTS」
問答無用で最初に聴くならこれしかないと思います。
ブルーハーツのブルーハーツたる所以が余すことなく詰まった歴史的傑作。
3rd「TRAIN-TRAIN」
マーシーの最高傑作「TRAIN-TRAIN」「青空」があるので、外せない一枚。
セールス的にも最も成功したアルバムです。
6th「STICK OUT」
7th「DUG OUT」とセットで制作されたアルバムで、「STICK OUT」の方がアップテンポな曲で構成されています。
「旅人・月の爆撃機」など一般的な知名度が低い名曲が多数収録されてます。
↑ ザ・ハイロウズ ↓ (1995 – 2005)
ブルハ解散後、マーシーがヒロトを誘って再び2人を中心に結成。
バンド名の由来はマーシーがなんとなくつけたそうです。
ハイロウズは特にブルハ初期に背負った時代性や社会性、歌詞のメッセージ性から離れていきます。
そして、ロックの楽しいところと熱いところだけを凝縮。
演奏もキーボードが加わってスケールアップ。
より直情的かつ享楽的なロックバンドとして生まれ変わった感があります。
自分の中で、一番ブルハとの「決別」を感じたのは2000年リリースの名曲「青春」。
ブルハはあえてラベリングしなくても全部が青春だったけど、それを客観的な目線でパッケージしたところに「青春・ブルハ」との距離を感じました。
また、ハイロウズは(も)偉大な先人の音楽が元ネタ的に見え隠れするんですが、個人的に一番近いものを感じるのはパブロックの雄 Dr.feelgood。
(ヒロトがハーモニカを吹くキッカケはDr.feelgoodのリー・ブリロー)
ゴリゴリの無骨さ、男臭さ、ノリノリのゴキゲンさに通じるものを感じます。
この時期から作詞作曲はヒロトとマーシーのみ。
メディアなどでフィーチャーされるのもほぼヒロトとマーシーのみになってます。
ハイロウズの楽曲も名曲・タイアップ曲だらけですが、ブルハに比べるとイマイチ存在感は薄いかもしれません。
2005年、ヒロトの「解散は大したことじゃない」という言葉通り、何事もないように事実上の解散をします。
ハイロウズのおすすめアルバム3選
1st「THE HIGH-LOWS」
一度リセットして生まれ変わった勢いがそのまま詰まってるようなアルバム。
「松本人志のことを歌ってる」という信ぴょう性のない噂がささやかれる名曲「日曜日よりの使者」がラストを飾ってます。
3st「ロブスター」
その松本人志がジャケットのイラストを手がけた3rd。
ラストが「夏の地図」ってのもあるけど、夏に無性に聴きたくなる一枚。
「まぼろしはぼんやり見える 夢ははっきり見える」という言い回しがヒロトらしい。
4th「バームクーヘン」
レコーディングからアートワークまでメンバー自身で制作したDIY(Do It Yourself)精神に満ちたアルバム。
ジャケットはバームクーヘンをコピー機でとっただけ。
音質含めてその荒さも魅力的に映るのがロックの魔法であり、ズルイところ。
ザ・クロマニヨンズ (2006 – )
三たび、ヒロトとマーシー中心に結成。
バンド名はヒロトが「クロマニヨンズ」の案を出したところ、マーシーも「クロマニヨン」を思いついてメモしていたことから決まったそうです(意味は相変わらず不明)。
「高橋ヨシオ」というUMA(未確認生物)がマスコットキャラクター。
デビューは、2006年の大阪のフェスでシークレットで「出現」するというサプライズなものでした。
音楽性は再びキーボードなしの編成となり、楽曲はより短くシンプルに、歌詞はより抽象的になった傾向があります。
ブルハ・ハイロウズ・クロマニの変遷をみて思うのは、「青年が大人になり、もう一度子どもに戻ったみたいだ」ということ。
退化でも劣化でもなく、進化と成熟の果てに純化した子ども。
伝わりにくいかもしれないけど、これは表現者のあり方として一つの理想だと思ってます。
ともあれ、2人の根っこにある、生きることとロックすることをストレートに謳う姿はずっと変わらず。
1年に一度フルアルバムをリリースし、ツアーで全国を回るという安定した活動を続けています。
ブルハ以降、全体的に言えばファン層は徐々に狭まっていると言えるかもしれません。
曲の良し悪しの問題ではなく、ブルハは「ロックファン以外の世間一般」にも届いたのに対し、クロマニは比較的ロックファン向けに絞られた音楽性になっているという意味で。
それでもタイアップ曲が多く、ライブチケットは即完。
人気も実力も衰えを知らず、すでに活動期間はブルハ・ハイロウズを超えています。
デビュー以来一時も止まらず、全力でロックし続けている2人はどこまで行くのか?
まだまだ2人の伝説は続いています。
クロマニヨンズのおすすめアルバム3選
6th「ACE ROCKER」
ずっと1stをチョイスしてきましたが、クロマニの一枚目は6th。
「他には何も、ハル、バニシング・ポイント、欲望ジャック」という序盤の怒涛のテンションが圧巻です。
7th「YETI vs CROMAGNON」
「ACE ROCKER」と同じ理由でピックアップ。
「突撃ロック、黄金時代、人間マッハ、涙の俺1号」としょっぱなから畳み掛けてきます。
11th「ラッキー&ヘブン」
打って変わってミドルテンポの良曲が揃ったアルバム。
聴きやすいというのもあって、リリース後の1年間で一番聴いたのは多分このアルバムです。
ヒロトとマーシーのデビュー後の掛け持ちバンド
さいごに、ヒロト&マーシーのコンビ以外のバンドを1つずつ。
ヒューストンズ (1995) 【甲本ヒロト・ブルーハーツ期】
ブルハの休止中に少しだけ活動していたバンド。
サポートメンバーとしてマーシーも参加してたようです。
ブルハの「PAN」収録のヒロトの曲「歩く花」などはヒューストンズの作品です。
そのほかの曲は残念ながらリリースされていなく、未発表音源に関しては今後もリリースすることはないようです。
(↑本人が言ってましたが、いつどこで言ってたかは忘れました)
また、ヒューストンズの「呼んでくれ」は2016年公開の映画「ハルをさがして」で主題歌になってます。
こんなマイナーな曲ですら、聴いた瞬間心を掴まれるような名曲です。
ましまろ (2015 – ) 【真島昌利・クロマニヨンズ期】
1980年以来親交のある真島昌利、真城めぐみ、中森泰弘の3人組バンド。
2015年に「ガランとしている」でデビュー。
ましまろは色々なフェスに出演してるイメージがありますね。
アコースティックギターを演奏する、クロマニヨンズとは違う顔のマーシーが見られます。
さいごに
2人はバンドの他、ソロや提供楽曲、参加楽曲も多数ありますが、今回はバンド活動に絞って紹介しました。
なんとなく2人の活動やスゴさが伝わったでしょうか?
何より書いた本人が、書きながら「何なんだこの人たちは」と改めて思いました。
浮き沈みの激しい音楽業界で、ずっと止まらず、ずっとブレずに、ずっと最前線にいますからね。
ただ楽しんでるだけという顔をして。
同じ時代に生きてるだけで奇跡みたいな幸運だと思うので、色々アルバム聴いたらぜひライブにも行ってみて下さい。
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