Have a Nice Day!が新曲「わたしを離さないで」をリリース。

MVは「ライブの終演時にステージ上で初公開」という演出がされた。
ライブは動画配信アプリを使って生配信するという新しい試みもされていたので、その点も含めていくつか感想を。

ちなみにこのライブ、発売後すぐチケット取っていたのに、当日行けずアプリで鑑賞・・・。
初の動画配信はせめてもの救いになった。

「わたしを離さないで」サウクラでの初視聴

今回の新曲はMV公開の少し前からサウンドクラウドで先行配信していた。
で、そっちで初視聴した感想は、「良い!」。

色んな「良い」があって、まずこれまでと一味違ったポイントはキーボード、遊佐春菜のコーラス

ギターの中村むつおも参加しているようだけど、おそらく印象の比重が大きいのは遊佐春菜の方。

その遊佐の声が、曲に深みや厳粛さ、スケール感をグッと加味している。
またその雰囲気が歌詞の内容と合っていて、この曲にとって欠かせないアクセントになっている。

5月のライブでは遊佐の声の印象は特になかったので、意外な発見だった。

(【追記】ライブ映像を観たら、声量的にも印象が強いのは中村むつおの方かも。いずれにしてもコーラスが良い)

もう一つ、思った「良い」はメジャー感
言いかえると「深夜放送ではなく、ゴールデン」感。

7月に桜エビ〜ずに提供した「リンドバーグ」でも思ったが、届くリスナー層の幅がグッと広がったように感じる。

そういう意味で「軽く」はなった。
が、薄くはなってないし、浅くもなってない。

深夜からゴールデンに昇格した途端、何かが欠けてつまらなくなってしまうTV番組にはなっていない。

「リンドバーグ」も「わたしを離さないで」も、普通にキレイなメロディで作っても、純度の高い浅見のカラーで染まってる。
ソングライター、メロディメーカーとして、完全にもってるなーと実感した。

横田真悠主演「わたしを離さないで」MV

MVは雑誌セブンティーン専属モデル、横田真悠が主演したドラマ仕立てのストーリーになっている。

内容の感想はさておき、このMVを見てさらにメジャーを意識して作ってると感じた。
何をやりたいかも分かりやすく伝わってくる。

5月に行った初ライブでは、パッと見で伝わらないことも少なくなかった。
ライブの予告動画で言ってた「漬け物」云々は何のことかわからなかったし、フロアに流した金回収ボートも「?」という感じで、正直「面白そう」でパッと思いついた事をやってるように感じた。

(思いつきの「面白い」も悪いわけではないけど。「漬け物」はモッシュピットで「モッシュ漬け」を作ってたらしく、会場にいても気づかなかった。回収ボートは、その後の活動を見て「CD以外で収益を上げるための試みの一環」だと理解)

例えば、去年行ったハイスタの埼玉スーパーアリーナでは待ち時間に観客一人ずつの顔を大画面で映すという演出があった。
これは「20年近くレコ発を待った観客も主役」というメッセージがストレートに伝わったし、会場はすごく湧いて誰もが楽しめた。

開演前には不快に思う人がいないよう、ことわりのアナウンス。
なんだかんだメジャーの一線にいる人たちは、すごい考え抜いてると感心することが多い。

この「分かる・伝わる」は、結構大きいものだと思う。

人気モデルを起用した「わたしを離さないで」MVは、ターゲットが10代後半の女子、その層を起点にネットで拡散、mvの視聴に繋げる。
なぜかサブスクでの配信が遅れてるのもyoutubeの視聴回数に集中させるためかもしれない。

あくまで推測ではあるけど、意図を汲み取ろうとすると、そんな狙いや目的が伝わってくる。

10代の女子はハバナイのファンになりやすそうか?という疑問は浮かぶ。
でも、じゃあどんな層なら効果的に届くのか?となると、それが見えにくいのがハバナイで。

曲的にも10代に問題なくウケそう、というか、間違いなく若い人向けではあるので、広がりやすい10代女子向けに仕上げるのは、全然アリだと思う。

動画配信アプリ「showroom」でのライブ配信について

無駄になったチケット代は投げ銭したつもりで、鑑賞。
観てたというより、ほとんど聴いてた感じだったが、ざっくり思ったことを。

何より思うのは、フジロックしかり、無料配信は問答無用でありがたいし、できれば今後も続けて欲しい。

視聴者数

視聴者数の合計は終演時に1000人に届かないくらい。
ずっと右肩上がりでスゴイなと思ったんだけど、一旦カウントされたら退出しても減らない仕組みなのかもしれない。

音質

そんなに品質を良い悪い言うものでもないし、普通に聴けたので十分。

ただ、コーラスの声とか観客の声は伝わりにくく。
シンガロングとかどのくらいの反応だったかはよく分からなかった。

画質

これはさすがにちょっとひどかった…。
ここまでビットマップが荒れてる映像を見たのは久しぶり。

もしかしたらこっちの環境の問題かもしれないけど、せっかくのVJがもったいなかった。

「わたしを離さないで」とシンガロング

序盤に「フォーエバーヤング」をやったのもあって、後半「マーベラス」「わたしを離さないで」でのシンガロングをメインに、という構成になっていたと思う。

ただ、事前にサウクラで新曲を聴いて感じたのは、「次のライブでのシンガロングは難しそう」ということ。

一つは歌詞が頭に残りにくい。
これは昔と比べてJポップ全般がそうなってるし、残りやすい歌詞書く人の方が珍しい。

加えてサウクラでは歌詞表示もないし、ライブまで間もないし、多分難しいだろうなと。

が、ライブでは歌詞を一拍速くVJで表示していて、カラオケのように歌える工夫がされていた。
この辺もすごい「観客の姿を想像」していて、上手いなと思った。

さいごに

今書いてる時点の「わたしを〜」の視聴回数を見たら、2万弱。

前に、別記事で「自分のハバナイの第一印象に比べて、世間のリアクションがあまりに小さかった」と書いた。
それでも代官山ユニット(600人)は普通に埋まると思ってたら完売していないようで、また「アレ?」となった。

「わたし〜」は届く射程が一回り広がったと感じていたので、この視聴回数に関してもやっぱり「もっといっていいのでは」と感じてしまう。

例えば、今年ハバナイ以外で特に良いと思ったバンドに、「humpback / DYGL / 揺らぎ」がいる。

背景に見える代表的なバンドは「チャットモンチー / ストロークス、リバティーンズ / マイブラ」で、視聴回数はだいたい「数百万 / 数十万 / 数万」をイメージしていたら、実際そのくらい。

ハバナイだけなぜこれほど見えないのか。
しみじみ不思議だし、残念にも思う。

「わたしを離さないで」に思う「運命に抗えるか」というテーマ

「わたしを離さないで」はノーベル文学賞作家カズオイシグロの同名小説からとったらしい。
この小説はだいぶ以前に読んでいて、根っこにあるテーマだと思ったのは「運命に抗えるか?」。

作中描かれる「ある悲劇的な運命」は一見SFやミステリーのようだけど、作品の本質はそこではない。
SFやミステリー、エンタメだとしたら、逃げようと思えば逃げられるのに、粛々と運命を受け入れるような描かれ方はされない。

この作品は生まれもった運命はどんなものでも甘んじて受けいれる普遍的な人間の姿を描いた文学で、きっとそこには「運命には抗えるか?」という投げかけも含まれている。

新曲にそんなテーマが込められてるわけじゃないだろうけど、どこか小説と重なって見えた。

ハバナイはアンダーグランドで生まれたが、その運命に安住するのではなく。
メジャーというオーバーグラウンドを再選択し、手を伸ばしてるような。

届いたとはまだ言えないかもしれないけど、少なくとも抗って手を伸ばしてる曲のように思えた。

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