
以前「甲本ヒロトの薬物使用を疑ってる人に聴いてほしい1曲」という記事を書いた。
その中で、「ファン以外の人とファンの甲本ヒロト像にはギャップがある」ということを言っている。
その後ふと、その「ギャップ」は「明石家さんま / ビートたけしのヒロト像」に重なっていると思った。
また、そこからは2人の芸風の違いも見えてくるように思えた。
2人は甲本ヒロトをどう見ていたのか。
そこからどんな芸風の違いが見えるのか。
実際の2人のコメントを引用しつつ、自分の考えをまとめてみた。
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甲本ヒロトの薬物使用を疑ってる人に聴いてほしい1曲
明石家さんまの甲本ヒロト観
前回の記事では次のような傾向がありそうと書いた。
ファンのイメージ → ヒロトはクスリと無縁
これをさんまとたけしの2人に当てはめると次のようになる。
ビートたけし ≒ ファン
(後で触れるが、ビートたけしは実際にファン。さんまは分からないが多分ファンではないだろう)
急いでフォローすると、別に明石家さんまが「ヒロトはクスリやってそう」と言っていたわけではない。
そうではないけど、いわゆる「破天荒なロックンローラー」像を持っているという点では共通していると思う。
さんまがそういった印象を口にしたのは、ヒロトの弟の俳優、甲本雅裕と番組で共演した時だった。
↓ だいぶ省略されてるけど、一応wikiにもそのことが載っている(2019.05.10)。
このテレビ出演というのは日テレの「さんま御殿」。
甲本雅裕が何に対して「僕より謙虚ですよ」と言ったか書かれていないが、それはさんまの次の一言に対してだった。
この時も自分は「甲本ヒロトがそんな風に見えるんだ」と驚いたので、もう10年以上も前のことだけど鮮明に覚えている。
この言葉から、明石家さんまはヒロトに対して見た目通りの(ステージ上で暴れまわってるような)印象を持っていたのがわかる。
ビートたけしの甲本ヒロト観
ビートたけしがヒロトのことを話していたのは2015年放送の「一流が嫉妬したスゴい人」という番組。
たけしは「嫉妬する人物」として2人の名前を挙げていて、その内の一人は所ジョージ。
そしてもう一人がブルーハーツの甲本ヒロトだった。
たけしは次のようにコメントしている。
「リンダリンダなんか歌ってる時ジーと見てるとね、あぁもしかすると俺はこれやりたかったんじゃないかなぁって。漫才師じゃなくてこういう感じでこういう歌、歌いたかったんじゃないかなと思ったっていうか、気がついた。 嫉妬したね」
「あの人はねぇ、悲しいのよ。不良をやろうとして不良になれない子のパンクって感じがしてね。反社会的な感じでやるけど、実は歌での表現でしかそうことできない感じの。」
「だからブルーハーツ最初見た時、あぁパンクやろうとしてるけどちょっと悲しいなぁって感じがあったね。よく考えるとパンクでもなんでもない演歌なんだよね。でも感じがパンクってのは何だろうね。」
「16、7の頃を思い出すみたいな。その時にこういう歌で涙したんだろうなあって感じがあって。いいなぁって思うね。」
「不良をやろうとして不良になれない子のパンク」。
(これは自分の考えだが)確かに初期の頃はある程度意識的にパンクス(=元々は『不良・チンピラ』を表す俗語)たらんとしていた部分があると思う。
アンチに満ちた歌詞のメッセージ性含め。
実際は、メンバー4人とも全然不良ではなかった。
歌詞の「僕」という一人称や(当時のロック・不良のイメージは「俺」だった)、「ガンバレって言っている!」という愚直なメッセージも『不良になりきれてない』というズレを感じさせるものかもしれない。
でも、それは自分たちが影響を受けたパンクスのスタイルを踏襲した部分と本人達の「素の顔」が自然に混ざっていた姿のように思う。
そこに「悲しみ」を感じ取るのはたけし特有の感性かもしれない。
が、ともあれここで言いたいのは、たけしは「外側の不良っぽさの奥の内面も見ていた」ということ。
そして、実際「ヒロトは見た目通りの不良じゃない」と感じ取っていたということ。
しかも初めてブルハを見た瞬間から。
明石家さんまの甲本ヒロト像は「荒くれ者」という表面的なイメージ通りのもの。
ビートたけしの甲本ヒロト像は「不良になりたいけどなれない青年」という内面性を含めたもの。
そこに2人の甲本ヒロト像、ひいては2人の視点の違いがくっきり表れてるようで興味深い。
ちなみに浅草キッドの水道橋博士はヒロトと中学の同級生。
水道橋博士はビートたけしに憧れ、そのビートたけしが自分の同級生のヒロトに憧れてる、という関係性も面白いなと思う。
明石家さんまとビートたけしの甲本ヒロト観の違いに見る2人の芸風の違い
また一つフォローすると、結論として言いたいのは「さんまは人の表面しか見ていない浅い芸風」みたいなことでは全然ない。
10数年前、さんまが「荒くれ者でしょう。」と言ったのを聞いて、自分は「ヒロトがそんな風に見えるんだ」と驚いた。
そして、その後思ったのは「そこが明石家さんまのスゴさなんだろうな」ということだった。
何がすごいかと言うと、「分かりやすいところだけを切り取って受け取る、伝える」と言うのも大きな武器だと思うからだ。
分かりやすいところをバッサリと切り取れるからこそ、スピード感のある応酬が出来る。
そして、万人にウケやすい笑いを生めるのだろう、と思ったのだ。
一方、ビートたけしは人と違った視点の意外性のあるコメントや、映画など分かりやすさだけじゃない奥深さを追求した表現も得意としている。
2人の甲本ヒロト観からは、そんな2人の芸風の違いが見て取れるように思った。
さいごに
ビートたけしとヒロトの関係性について一つ補足。
番組でたけしがヒロトの名前を挙げた際、スタジオのタレントから「意外!」という声が挙がっていた。
が、実はたけしがヒロトの名前を挙げたのは初めてではなかった。
初めてないどころか、ずっと昔から「ブルーハーツみたいなバンドをやりたい」とヒロトの名前を出していた。
たけしが以前そういったコメントをしたのは、ブルハがデビューして間もない1988年の雑誌「宝島」でのこと。
1988年というと番組放送(2015年)の30年近くも前。
名前を出したこと自体は意外ではなかったけど、「30年もの間ずっと変わらずにヒロトに憧れてたんだ」と思うと一ファンとしてグッとくるものがあった。
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