日本では2007年に『The Great Unwanted(恋はゴージャスに)』でデビューしたイギリス、ロンドンのポップバンドLucky Soul。

「ダスティー・スプリングフィールド、サンディー・ショー」といった60年代ガールズポップスを踏襲しつつ、進化させた「ニューレトロポップ」な楽曲で話題になった。
個人的にも初めて聴いた瞬間からファンになり、以来ずっと聴き続けている。

この記事では最近の動向やバイオグラフィー・ディスコグラフィーを通して、ラッキーソウルについて紹介していきたい。

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ラッキーソウル 最新曲&トピックス【更新 2018.05】

2018/05現在、最新アルバムは2017/08/11発売の3rdアルバム「HARD LINES」。
「HARD LINES」はapple music/spotifyなどストリーミングサービスでも配信されている。

アルバムリリースに先行して配信されたシングル「No Ti Amo」はMVも公開中。
フルだと長いため、youtubeや先行配信用の楽曲は「radio edit」(簡単にいうと短縮版)となっている。

ラッキーソウルとは?バイオグラフィー

ラッキーソウルは2005年結成のイギリス、ロンドン・グリニッチ出身のポップ・バンド。
メンバーは5人の男性陣と紅一点の女性ヴォーカル、アリ・ハワード。

出典:Lucky Soul | ソニーミュージック

ラッキーソウルを語る上での最重要メンバーは、作詞作曲、プロデュースもこなすギタリストのアンドリュー・レイドロウとヴォーカルのアリ・ハワードの2人といって差し支えないだろう。

アンドリューの口当たりは軽いけど骨太なメロディセンスとアリハワードの儚さと凛とした強さを湛えたボーカルがこのグループの両翼と言える。
もちろん、アリハワードの美貌も忘れてはならないが。

ラッキーソウルをオススメするにあたって、最も分かりやすくアピールできるコピーは記事冒頭にも書いた
「サンディー・ショー、フィルスペクター、ロネッツ」といった60年代ガールズポップス好きは必聴。」といったものだろう。
自分がこんな文句を目にしたら100%チェックする。

ただ、ラッキーソウルの音楽は上辺の懐古主義でもマーケティング先行のファッションでも、また単なる先駆者の二番煎じでもない。

アンドリューは「60年代こそがポップ・ミュージックの絶頂期」と断言し、アリも子供の頃からサンディー・ショーなどを愛聴していたらしく、自分達がプレイする上でも最も自然な音楽だったと言える。
そんな二人が出会えたのは本当に幸運に思える。

[参考]Lucky Soul『A Coming Of Age』インタビュー:iLOUD

印象的だった1stのライナーノーツでは次のように形容されている。

「いったい彼らは何者だろう。どんなことをしているのだろうか。
クラウトロックを復活させているヒップスターたちの上を泳いでいるのか。新たな流行を少しずつ広げているのか?実験的なフォークとかジャズメタル?エレクトロニカやトイトロニカ、パンクロック、アルト・コア、ローファイ、ミッド・コアといったもの?
いや違う。Lucky Soulが生み出しているのはポップ・ミュージックだ。
ポップという言葉は本来、不朽の名曲を意味している。「前にどこかで聴いたことがある」という捉えどころのないデジャブに引き込まれる魔法の歌。」

「チャート上で忙しなく流行り廃れていくような流行曲がポップス」というイメージがあったので、本来は「不朽」を意味しているというのが新鮮だった。

ロネッツの「ビーマイベイビー」など1960年代のガールズポップにはそんな魔法みたいな歌がたくさんある。
そして、LUCKY SOULの音楽もそういった原義としてのポップ・ミュージックという指摘にすごくうなづけた。(記事タイトルもここからつけさせてもらった)

事実、まだ10年くらいだが、デビューから変わらず曲を聴き続け、そこそこの時間をかけてこんな文章を書いているファンがいる。

特に突出したキラーチューン満載というわけではないけど、初めて聴いた瞬間から耳に馴染んで、何年聴き続けても色褪せないところがラッキーソウルの最大のマジックだと思う。

ディスコグラフィー | シングル・EP

シングル、EPは日本でのリリースはない。
そのため、入手できるかは分からないが、apple music/spotifyで「Woah Billy! / White Russian Doll / Up in Flames」以外は配信している。

また、「Ever Yours I Remain / Lonely This Christmas / That Hollywood Glow」以外は日本盤のアルバムに全て収録されている。

[2006]「My Brittle Heart / Give Me Love」
[2006]「Lips are Unhappy / Baby I’m Broke」
[2007]「Ain’t Never Been Cool/Struck Dumb / I Gots the Magic」
[2007]「Add Your Light to Mine, Baby / Ever Yours I Remain」
[2007]「One Kiss Don’t Make a Summer / That Hollywood Glow」
[2007]「Lips Are Unhappy / Lonely This Christmas」
[2010]「Woah Billy! / White Russian Doll」
[2010]「Up in Flames」
[2017]「Ti Amo」
[2017]「(Hurts Like A) Bee Sting」

補足が必要なのが2006年にリリースされたタイでの販売用の特別編集盤「Lucky Soul」。

これはタイのポップバンド「La-Ong-Fong」との共作になっている。
ジャケットは1stシングル「My Brittle Heart」と同じで、収録曲は次の7曲。

01. My Brittle Heart
02. Give Me Love
03. Lips Are Unhappy
04. Baby, I’m Broke
05. Lips Are Unhappy (Thai Version)
06. ลอง (Lucky Soul Version)
07. ลอง (Remix)

4曲目までは普通にLucky Soulが歌ってるもの。
5曲目は「La-Ong-Fong」が歌っているLucky Soul「Lips Are Unhappy」のカバー。
6曲目はLucky Soulが歌っている「La-Ong-Fong」「ลอง」のカバー。7曲目はそのremixバージョン。

「ลอง」は検索したらタイ語で「試みる」という意味らしい。
歌自体はタイ語ではなく、普通に英語で歌われている。

ディスコグラフィー | アルバム

フルアルバムは2018年現在3rdまで。

1st 「恋はゴージャスに」(原題:「The Great Unwanted」)

2007年発売の1st。
ラッキーソウルのデビューは2006年のシングル「My Brittle Heart」だが、日本での発売はアルバムのみ。

国内盤のジャケットは国内盤仕様↑。
↓洋楽盤と比べると、オリジナルとはイメージがかけ離れた、かなりキラキラしたガーリーテイストに仕上がってる。

01. Add Your Light to Mine, Baby(邦題「恋はゴージャスに」)
02. One Kiss Don’t Make A Summer
03. Struck Dumb
04. Lips Are Unhappy
05. My Darling,Anything
06. Get Outta Town!
07. The Great Unwanted
08. Baby I’m Broke
09. My Brittle Heart
10. Ain’t Never Been Cool
11. The Towering Inferno
12. It’s Yours
13. The Last Song
14. I Gots The Magic(日本盤:ボーナストラック)
15. Give Me Love(日本盤:ボーナストラック)

↓特にオススメの曲。

  • Add Your Light to Mine, Baby
  • Get Outta Town!
  • Baby I’m Broke

ジャケットだけでなく、1曲目は「恋はゴージャスに」という、これも内容を無視した邦題がつけられている。
「恋はゴージャスに」は森泉を起用して日本独自のMVまで制作したらしく、同曲は深夜番組『たけしのコマネチ大学数学科』のエンディングテーマにも起用されている。

この辺はレーベルがソニーだけあって、かなり積極的に売り込もうとしていた姿勢が見て取れる。
そういったマーケ先行のアプローチには、賛否があるかもしれないが、個人的にはアリだと思う。

理由は、「まずは興味を持ってもらうこと」を考えたら、とにかくキャッチーさと露出を優先させるしかないと思うから。
それくらいしないと海外のインディーズバンドに注目してもらうのは難しい。
(キラキラしたガーリーテイストも楽曲や見た目の印象で言えば、全然ズレていないし)

何より、多少ゴリ押ししても評価されてほしい、されるべきバンドだと思うので。
実際、大手(ソニー)から出た1stの頃と違い、3rdの反応は本当に不当とも思えるほど寂しい感じだ。

7年ぶりの再始動なのにネットメディアでは全く取り上げられず、タイアップとかもおそらくないだろう。
微力過ぎるけど、少しでも知ってもらいたいということもあって、今この記事を書いている。

2st 「A COMING OF AGE」

3年ぶりの2010年リリースの2nd。1stとは違い、日本盤も洋楽盤と同じタイトル、ジャケットでの発売。
2ndのみapple music/spotifyで配信されていない。

以前は米国では配信されていて、米国版のapple musicツールをここに貼って裏技的に聴くことができたのだけど、もうどの国でも配信してない模様。

レーベル「Elefant Records」のyoutubeチャンネルでリードソング「Woah Billy!」を始め、結構たくさん動画がアップされているので、こちらで収録曲を聴くことができる。

[DISC:1]
01. Woah Billy!
02. White Russian Doll
03. Up in Flames
04. Love³
05. Upon Hilly Fields
06. A Coming of Age
07. Warm Water
08. Ain’t Nothin’ Like a Shame (To Bring It All Back Home)
09. That’s When Trouble Begins
10. Southern Melancholy
11. Our Heart
12. Could Be I Don’t Belong Anywhere
13. Cryin’ In The Morning(日本盤:ボーナストラック)
14. Why Can’t Everyone Be Nice For a Change(日本盤:ボーナストラック)
15. Rock The Casbah(日本盤:ボーナストラック)

[DISC:2] 限定版特典
01. Woah Billy! ≪グラストンベリーフェスでのライブ映像 2010/6/27≫
02. Add Your Light to Mine, Baby ≪同上≫
03. A Coming of Age ≪同上≫
04. White Russian Doll ≪ミュージック・ビデオ≫
05. Woah Billy! ≪ミュージック・ビデオ≫

↓特にオススメの曲。

  • Woah Billy!
  • Ain’t Nothin’ Like a Shame (To Bring It All Back Home)
  • Rock The Casbah

日本版ラストの「Rock The Casbah」はclashのカバー。原曲の方はclashの中では特に好きな曲ではないんだけど、カバーを聴いて好きに。それくらいlucky soulにハマってる。
もちろんこの曲も配信されていないので、原曲の方を貼っておく。

一曲目「WOAH BILLY!」は実在するアーティスト、ビリー・ブラッグに向けて歌ったもの。
それを聴いたビリーが自身が監修するグラストンベリーのフェスにラッキーソウルを招いている。

そして、そのフェスでの映像が特典DVDとしてついている。
頭に花飾りをのせ、タイトなミニスカートで歌うアリ・ハワードはやはり最高にキラキラしているので、もし買うならDVD付属の限定版がオススメ。

出典: 「A COMING OF AGE」 限定版特典DVD

3st 「HARD LINES」

2017年8月リリースの3rdアルバム。
(視聴ツールは記事上部に貼っている)

ジャケットは2nd同様、洋楽盤と同じ仕様で、これまでと違い日本特有のボーナストラックはなし。
加えて今は配信サービスもあるので、今のところ3rdだけCDを購入していない。

↓特にオススメの曲。

  • No Ti Amo
  • Too Much
  • (Hurts Like A) Bee Sting

感想は、他のアルバムと比べて、全体としてより個々で光る曲があるという印象だった。
特に「オススメ」として挙げたアルバムに先行して配信された3曲。

Lucky Soulはアルバム通してのバランス、完成度の高さが個人的に魅力なので、この点はあまりプラスとは言い難いポイントではある。
でも、なんだかんだ2017年のベスト10枚に入るほど聴き込んだ。

上でも書いたが、寂しいのは一般的な反応が乏しすぎるところ。
リリースから1年、結局日本の音楽サイトで取り上げられてるのは一度も見かけなかった。

やはりメディアは「レーベルからの依頼やPV(ページ閲覧数)が見込めるものを取り上げる」という事実を改めて思わされる。

海外ではライブやフェスに参加したようだけど、日本でのライブはなく。
今回は絶対に行くつもりだったので残念だった。

2ndの発売から7年、3rdがリリースされただけで大きな進展ではあるので、これからもコンスタントな活動を期待したい。

さいごに

ざっくりとだが、2006年にデビューしてから現在までの軌跡を振り返ってみた。
今後も動きがあれば、また随時追加・更新しこうと思う。

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