LAIKA CAME BACK(ライカケイムバック)とは、ミュージシャン車谷浩司のソロプロジェクト名。
その名前の由来と意味について自身で書かれた文章がとても感動的だったので、紹介します。

【関連記事】
Laika Came Back、「こはく」で初の映画主題歌を歌う
車谷浩司の「日本の好きなミュージシャンTOP2」が意外だった【youtubeで発表】

LAIKA CAME BACK(車谷浩司)の略歴

簡単に車谷浩司(くるまたにこうじ)のバイオグラフィーを。
年齢は1971年生まれの、48歳(2019年時点)。

1990年にパンクバンドBAKUのギタリストとしてデビュー。
1993年に石田小吉とのエレクロトポップユニットSpiral Lifeを結成。
1996年にソロプロジェクト、AIR名義での活動を開始。
2010年に新たなソロプロジェクト、LAIKA CAME BACKとして始動。

一般的な知名度はそこまでですが、自分のように熱心なファンはずっと一定数いて、ある意味不動の人気を獲得しているアーティストだと思います。

音楽性は本当に時期によって様々で、LAIKA CAME BACKになってからは、元々あった叙情性が全面に来たような作風となってます。

変化の振り幅が大きいアーティストですが、ここからはそう大きく変わらないような気がしますね。

公表されている「LAIKA CAME BACK」の名前の意味

LAIKA CAME BACKが当初から公表している名前の由来は次のものです。
今もオフィシャルサイトで掲載しているので、引用します。

(おそらく「THE MAN WHO IS」というページタイトルはTravisの名盤「THE MAN WHO」から。全体的な音楽性や歌い方、アートワークの雰囲気もライカは結構Travisに近いです)

THE MAN WHO IS… | LAIKA CAME BACK

もし志半ばにして命を終えなければならなかった者達がこの地球上に帰ってくることが出来たら、何を思い、何を描き、何を奏で、どんな行動をするのでしょう。

「ライカ」というのは「1957年、ロシアの宇宙船「スプートニク2号」に実験で乗せられた犬の名前」。
アジカンの同名の曲でもモチーフになってますね。

ライカはこの実験によって犠牲になっているので、「もしそんな命が戻ってくることができたら」という思いを込めて「LAIKA CAME BACK」という名前にしたということです。

1st「Landed」は「着陸(帰還)」ということでしょう。

詩的で語感も良いし、動物実験に反対している車谷らしい名前だなと思ってました。

でも、その後、2011年の震災を受けたことで、車谷はより詳しく名前の由来について語ります。
それがこの記事で紹介したいと思った「音楽文」です。

東日本大震災を受けて発表された「LAIKA CAME BACK」の由来に関する文章

2011年3月11日の東日本大震災後の一週間後、3月18日にアップされた文章です。
車谷が被災された方へのメッセージを綴ったもので、その中で「LAIKA CAME BACK」に込めた想いが明かされています。

「最愛の方を亡くされた皆さまへ」

この度の東北関東大震災の被害に遭われた方々に
心から御見舞い申し上げます。

そして愛する人、家族、恋人を亡くされた皆さん、
これ以上ない悲しみ、絶望の淵におられると思います。

僕も数年前、世界一、宇宙一愛する人を、突然失いました。
この絶望感、苦しみは、体験した人間でなければ
絶対にわかりません。
生き地獄。
僕には本当によくわかります。
辛い思いをさせてきてしまった。
なぜ助けてあげられなかったのか。
どうしてこんなことになってしまったのか。
自分を責めに責める日々。
仮に肉親一同全てを一度に亡くしたとしても、
きっとここまで悲しまないでしょう、
それほどの悲しみ、絶望の淵の淵にいました。

一緒に死ぬことを考え、どうしたら人に迷惑を
掛けない形で死ぬことが出来るか、
その一番良い方法を考え、調べる毎日でした。
仕事においても僕の仕事環境では、決まっていたイベント、
ツアー、レコーディングをキャンセル、延期出来るような
状況ではありませんでした。
生き地獄とはまさにこのことです。
僕は今でも、当時のある日からの一定期間の
記憶がありません。

でも、そんな地獄の日々のある日ある時、
その人とのかけがえのない思い出の中から、
もしその人と今話が出来たら、その人は何を言うだろう、
今をどう思うだろう、そして何をするだろう、
どう行動するだろう、どう考えているだろう?
と、ふと思いました。
そして、その中で、様々なその人の声や絵が
浮かび上がってきました。
そしてそこから得た答えは、
僕たち人間は、誰ひとり残らず、誰でもいつか必ず死ぬ。
いつか必ずその時を迎える。
ならばその日まで、一度は一緒に死んだと同じこの命。
この一生を、志半ばで命を終えなければならなかった
愛する人の分まで、おもいきり生きて、生きて、
生き抜いて、誰に何を言われようが全く関係ない、
残りの人生を最大限有意義に使い切り、
そして最後に死んだ時に
「どう?頑張ったでしょ!」
と、胸を張ってむこうで会えるように、おもいきり
生きてやろう、そして清々しく、何の曇りも後悔も
一点もなくその日を迎えられるように、精一杯頑張ろう。
と思いました。

時に人々は、実際のあなたのその振り切った生き方、
行動に対し、人の人生を好き勝手にひやかすように
おもしろ半分にからかい、嘲笑し、知ったように中傷、
誹謗することがあるかもしれません。僕も日々受けています。
しかし、誰が何を言おうと、自分の人生です。
そして心ある人は、必ずあなたを正しい目で見てくれています。
仮にもし誰が見ていなくとも、無責任な他者に好き勝手
言われようとも、あなたの愛したその人は、
必ず、必ずあなたを見てくれています。わかってくれています。
それさえあれば、他に何がいるでしょう。

必ず会える。絶対にまた会える。
姿、形は変われど、生命、魂は永遠。
絶対にまた会える。
それを心から感じ、確信しています。
100億年以上とされる宇宙の歴史=生命の歴史の中、広大な宇宙、
無数にある生命の中から縁あって巡り会い、
強い絆で愛し、愛され、親として、子供として、
夫として、妻として、家族として結ばれた。
これがただ単に、偶然に出逢っただけなわけがない。
そしてこれが、たかだか長くても
80年前後という時間だけで全てが終わってしまうわけがない。
こんなに強い愛、縁が、絶対にそんなに簡単、単純な
ものなわけがない。もう二度と会えないわけがない。
これからも永遠、ずっと一緒に決まってる。
現に僕はまず今、それまで以上にその人といつも一緒、
遮るものは何もなくなり、ひとつになって、
今も一緒にいることを、心から実感しています。

「もし志半ばにして命を終えなければならなかった者達が、
この地球上に帰ってくることが出来たら、何を思い、何を描き、
何を奏で、どんな行動をするのでしょう。」

Laika Came Back は、こうして始まりました。

最愛の人を失った喪失感、虚無感というものは、
少なくとも僕においては一生消えることはないでしょう。
自責の念とともに、一生背負っていかなければなりません。

でも、本当の絶望、どん底、最底辺を知った人間は、強い。
この世で怖いものなど、もう何もない。何ひとつないのです。

ここに今、こうして最低最悪、最底辺の絶望から、
なんとか生きる意味を見い出し、生きている人間がここにいます。
人生とは、生きていくということは、本当に辛いことです。
しかし、それでも頑張って生きていけば、必ずいいことがある。
実際、素晴らしいことがたくさんありました。
絶対に、絶対に笑える日がやって来るのです。
僕の汚いこの首をかけてもいい、
その証拠が、現実に、実際に、ここにいるのです。
だから絶対に全ての終わりじゃない。
そしてひとりじゃない。
ここにもひとりいます、安心して下さい。

愛する人の死から、本当にたくさんのことを学びました。
生きるとは何か。死とは何か。
命とは何か。愛とは何か。
誠実とは何か。
人を愛するとはどういうことか。

あなたの愛する人は、
きっと、それをあなたに教えてくれるために
生まれてきてくれたのです。

愛する人が、その尊い命をかけて教えてくれたこと、
その死に、その愛に、報いるためにも
最後まで一緒に
おもいきり生き抜いていこう。

絶対に大丈夫。

今回の震災に遭われて愛する人を失い、
絶望の淵にいる方々に対して、
どうかほんの少しでも生きる希望になればと思い、
何も出来ない自分に出来ることのひとつと考え、
悩みましたがお話しさせて頂くべきだと思いました。
乱文お許し下さい。

おもいきり生き抜こう。

さいごに

この文章は当時リアルタイムでも読んでましたが、それからも時々読み返してます。
今年も3月がくると、ふと思い出して読み返しました。

たった3つの単語にこんなに深い想いが込もっていたことに驚くし、さすがアーティストだなと思います。
この名前の背景を知ってるのと知らないのとでは、1st「landed」の歌詞の意味合いもすごく変わってきます。

残念なのは、最近サイトがリニューアルされ、掲載されなくなってしまったこと。

理由があってのことかもしれませんが、自分は一ファンとして読めて良かったと思っているので、引用・転載させてもらいました。
(問題あるか若干心配になりつつ)

BAKU、spiral life、AIR、LAIKA CAME BACK、どの時期から車谷を知った人にも知ってもらえたらと思います。

関連記事