
ハバナイ の新曲「Smells Like Teenage Riot」について。
曲の感想というより、今回の新曲は周辺情報が盛り沢山なので、それらを中心に書きたい。
周辺情報というのは、タイアップや「インスパイアされてるであろう」元ネタなど。
曲名はもちろん、歌詞やジャケットも「今しかない」というタイムリーなネタをうまくリンクさせてるなと思った。
ハバナイ 「Smells Like Teenage Riot」、曲の感想やその他アレコレ
前作の「愛こそすべて」はビートルズ、「Kill All Internet」はプライマル・スクリーム「Kill All Hippies」。
そして今回の曲名はニルヴァーナの「Smells Like Teen Spirit」からだろう。
カート・コバーンの再来と指摘されるビリー・アイリッシュがブレイク中なので、ネーミングもタイムリーと言えばタイムリー(こじつけだけど)。
ちなみに「Smells Like Teen Spirit」はパティ・スミスがカバーしてて、自分はビリーはカートと言うよりパティ・スミスに似てるなと思った。
ダークで超然としたボーカルも、かっこよさが可愛さを凌駕するビジュアルも。
ハバナイに話を戻して。
サブスクで初めて聴いた印象は「ついに」。
何が「ついに」かと言うと、
去年ハバナイを知ってからリリースされた音源は、パッと聴いてライブで盛り上がりそうな曲ではなかった。
(現場ではアッパーチューンに変貌するけれど)
ハバナイと言えば一番はやっぱりライブでノれる曲。
毎曲なんだかんだしっかりハマりつつ、この感じがずっと続くのかなとも思っていた。
そんな中聴いた新曲だったので、「ついに分かりやすくライブで映えそうな新曲キタ」というのが一番の感想だった。
速くも激しくもないけど、一聴して波打つモッシュピットが目に浮かぶ。
ライブではシャウトに近くなる浅見北斗のボーカルや、がぜん存在感を増す中村むつおのギターの音が聴こえてくるようだった。
『FF XIV』CM曲に起用
『ファイナルファンタジーXIV:漆黒のヴィランズ』のCM曲に起用され、CMバージョンでは元スーパーカーのフルカワミキが参加している。
ゲームは全くやらないし、「スーパーカー = YUMEGIWA LAST BOY」で止まってる人間なので、イマイチ実感が伴わないんだけど、「FF × フルカワミキ × ハバナイ 」もスゴイ新境地。
「わたしを離さないで」(「Tune」ED )、「僕らの時代」(「チワワちゃん」主題歌 )に続き、タイアップが当たり前になってきた感じもスゴイ。
改めて、いよいよ一つ上のステージに登った感がある。
(それでもあまり動員に影響ない気がするけれど、、)
ジャケットと歌詞はあの名作のオマージュ(?)
ジャケットはイラストレーター・岡田成生の描き下ろしイラスト。
イラストは浅見北斗自身がディレクションしたらしい。
[出典] http://habanai.jp/
このジャケット、パッと見て何かを思い浮かべないだろうか。
と、言いつつ自分も最初は特に何も思わなかったけど。「SFチックなテイストだな」くらい。
その後、見たのが次のツアー告知画像。
[出典] http://habanai.jp/
「AKIRA」のTシャツを着てる浅見北斗。
これを見るとジャケットはもうオマージュにしか見えないし、少なからず意識してるのは間違いないだろう。
構図は映画のポスターやサントラと近いし、タイトルの赤文字のコンデンス書体(横に狭まった書体)も踏襲されている。
[Amazon] AKIRA (SOUNDTRACK)
冒頭に書いた「正にタイムリー」というのは「AKIRA」の年がちょうど今年、2019年。
作中、2020年に東京オリンピックが開催予定という設定や、「ネオ東京・大東京帝国」といった東京をフィーチャーしてるところも現実やハバナイにリンクしてる。
歌詞もニルヴァーナやブルハが見え隠れしつつ、全体的に「AKIRA」を感じる。
というか、もう曲を聴いてる間中、ダイジェスト映像のように「AKIRA」の名シーンが頭の中で浮かんでは消えて行く。
(「FF」のタイアップ曲であまり「アキラアキラ」言うのはアレかな…。)
細くは書かないけど、AKIRAを読んだ事ある人ならきっとピンとくるんじゃないかと思う。
[Amazon] AKIRA(1) (KCデラックス)
「AKIRA」のテーマから見る 「Smells Like Teenage Riot」
「AKIRA」のテーマの一つを単純に言ってしまうと「破壊と再生」。
それを象徴するモチーフとしてビル群がある。
終盤、AKIRAと鉄雄の「インパクト」でビルが押し流され、東京は壊滅する。
そんな最悪の状況の中、金田とケイは再建を宣言し、巨大なビル群に向かってバイクで疾走するところで物語は終わる。
破壊を象徴するのがビルであり、再生を象徴してるのもまたビル。
ジャケットはポスターやサントラに近いと書いたけど、もっと言うと後者のラストシーン、見開きで大きくそびえ立つビル群なのかもしれない。
そう考えると、ジャケットからは未来への疾走感やポジティブな意志を感じることができる。
(これは自分が思いついたことか誰かの受け売りか忘れたけど)AKIRAのラストシーンからは宮澤賢治の有名な詩の一節が浮かぶ。
「未来圏から吹いて来る透明な清潔な風」
興味深いのが、CM曲でコラボしてるフルカワミキもツイッターで新曲の感想を次のようにコメントしていた。
「新しい風に吹かれるような爽快な曲」
もし、浅見がAKIRAのラストシーンから「未来からの/新しい風」を感じ、「その感じ」を曲に込めて作ったのが「Smells Like Teenage Riot」だとしたら。
それは見事に成功してるように思った。
さいごに
曲はあまり関係ないけど、これを書いてて思い出したことを。
「AKIRA」の大友克洋作品は破壊シーンが多い。
2001年の「メトロポリス」も、2005年の「スチームボーイ」も派手に街並みが破壊されるシーンがある。
2001年というとアメリカの9.11、2005年もイギリスでテロが起こった年。
そのため、両作品は各国での上映の際に予定通りの公開が危ぶまれたそうだ。
そう言えばふと気になったのは、それに対して「AKIRA」は2011年東日本大震災を受けて翌年「大友克洋GENGA展」が開催された。
この展覧会では大友の各作品が展示され、中でも「AKIRA」の生原稿の全ページが展示されるというのが目玉だった。
これはよく考えたら、ちょっと不思議な話で。
震災がキッカケでサザンが名曲「TSUNAMI」を「封印」したのは有名な話だ。
「AKIRA」も街とビルが飲み込まれている様はかなりダイレクトに津波をイメージさせる。
その「AKIRA」を復興支援のためにフィーチャーするというのは、一見相応しくないようにも思える。
でも、宮城出身の大友はラストに力強い再建のイメージがあるからこそ、それを何よりも伝えたくて、あのタイミングで「AKIRAのすべて」を公開したのかもしれない。
再興を願って売上の一部を支援にあてた復興チャリティとして。
当時、自分は「GENGA展」に行った際「グッズほとんど売り切れてて何も買えなかった…」くらいの印象しか残らなかった。
でも、レビューを書きながら、今更ながらそんな大友克洋の心情を感じられた気がした。
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