webデザイナーがクラウドソーシングのデザインコンペを体験してみた感想 ーデメリット編

webデザイナーがクラウドソーシングのデザインコンペを体験してみた感想  ーデメリット編

昨年(2015年)一年間、クラウドソーシング(以下 CS)のデザインコンペに参加してました。
その経験から考えたメリットとデメリットをまとめました。

2回に分けて今回はデメリットについて。
【双方にとってのデメリット】【制作者にとってのデメリット】【依頼主にとってのデメリット】に分けて書いていきます。

❶ デザインコンペ ー双方にとってのデメリット

同じ理由で制作者、依頼主、双方にデメリットになる点です。
それは制作物を作る上でのマイナスと言えるかと思います。

❶ー① コミュニケーションと客観的な視点が不足した制作になる

デザインはクライアントと制作者がコミュニケーションをとりながら進めていく作業です。

クライアントの要望を叶えるのは大事ですが、クライアントの意見も一つの主観で正しいわけではないです。
web制作は客観的、俯瞰的な視点を踏まえつつ、クライアントの要望を叶えていくというものになります。

デザインコンペはその根本が欠けています。

例えば、依頼詳細に『赤が希望』とあったら、見当違いな配色でも、当選確率が上がるという理由で赤で作ります。
とりあえず依頼主のいう通りに作っておこう、という思考になりがちです。

密なコミュニケーションをとれない。
サイト設計の段階で客観的な視点が欠けている。

というのは制作する上で大きな欠点です。

ただ、それは依頼主側の視点でいうとメリットにもなり得ます。
理由は『方向性を絞らないことで様々な提案を受けられる』から。

中には自覚的に細かい指示をしない依頼主も見ます。
『テイストはあえて絞りません』『できるだけ沢山のテイストが見たい』という要望を書いてる人もいます。

そういう意味では、コミュニケーション不足は『制作の根本が欠けてる部分』でありつつ、コンペのメリット、醍醐味とも言えるかもしれません。

一方、制作者的には、やはり『的をしぼりにくい』というデメリットでしかないと思います。
『できるだけ色々なデザインサンプルを集めたい』という文面を見たときは、なんだか『捨て駒になってくれ』と言われてるような気分になりました。

これは一般の方から直での依頼で多い傾向でした。
制作会社からの依頼だと、その辺は固まっている場合が多かったです。

❶ー② きちんとした品質か判断できない

これも客観的な視点に欠ける点に関係します。

クライアントさんは基本的に非制作者でIT、デザインの知識が少なめです。
きちんとした品質か判断できない場合があります。

『クオリティ高い』と思ったサイトをさしおいて、『さすがにそれは…』というのが当選しているのを見かけます。

デザインの善し悪しだけならさておき、webだと実際構築できるかという問題もあります。

実際あった話を少し置き換えた例をあげると、
『レスポンシブ対応』という要望で明らかにレスポンシブには無理がある案を当選させた、
というケースを見かけました。

コンペで選んだトップページのデザイン案は、それを元にプロジェクト方式でさらに下層ページやコーディングなどを依頼することがあるようです。
でも、その依頼主のサイトはその後一年以上経ってもリニューアルされてません。

おそらく、のちに支障のあるデザインと気づいたと思われます。
でも、コンペに関しては、当選させた時点で報酬が支払われるので無駄な出費に終わったと思います。

コンペにはweb制作者ではない人も参加しています。
web以外のデザイナーが提案していて、パッと見綺麗だけどコーディングできないだろう、というもあったりします。

でも、依頼主は見栄えだけでそれを選んでしまうかもしれない。
そういう場合、結局誰も得しない残念なことになります。

良いデザインが選ばれることの方がやはり多かったですが、そうでない場合もあったのでデメリットとして挙げました。

❷ 制作者にとってのデメリット

無報酬/低報酬のリスク、下請けで中抜きされる、などは置いといて。
やってみて、自分がこれはキツかったなと思った点を一つ。

❷ー① 依頼主に比べて立場が弱くなる

これは具体的に【選定期間】においての話です。

【選定期間】というのは、提案を集めて締め切った後、依頼主が当選を選定する期間。
その期間に依頼主は候補の案/制作者に対して、修正をお願いすることができます。

『立場が弱くなる』というのは、この期間の依頼主のお願いは断りづらいという意味です。

選定期間に連絡をもらうというのは、報酬がゼロか数万〜かになる瀬戸際。
割に合わなそうな指示でも、機嫌を損ねて他の案を選ばれるなら、受けざる負えないという状況になりやすいです。

実際自分があった、ある個人経営の店長が依頼主のコンペでの話。

選定期間に連絡があって、店長の修正指示に応えて、あとはもう当選を待って納品するだけという段階になりました。

そこでその店長からの一言、『お店のスタッフに見せたら、気に入らなかったので全体的に修正してほしい』と。。。

そんな不条理な要望にも、『ここまできたら報酬ゼロになるよりはマシ』と応えるしかなかったです。

結局、メイン画像からレイアウト、配色の変更と、元の案はなんだったんだというデザインになりました。

これ以外にも自分は同様のことがあって。
他の制作者はこの選定期間で不遇な目にあっていないのかと気になります。

❸ クライアントにとってのデメリット

クライアントにとってデメリットを2つ。

❸ー① 出費が無駄に終わるケースがある

これは実際、当選金が無駄になったケース。
1つ目は、自分が当選させてもらった案件です。

期限が来て自分の含め、6件提案が集まったんですが、気に入ったものがなく、コンペが延長されました。

その時点で自分のカンプは気に入られていないのが確実。
が、結局延長しても気に入るのが集まらず、そのまま延長期間も終わりました。

そして、結局明らかに『消去法で仕方なく』という体で、自分の提案が選ばれました。
(たしか延長するとキャンセル不可だったかと。)

その後、そのサイトはリニューアルしてましたが、案の定全然別物のデザインでした。

2つ目。
これも延長しても気に入ったデザインが集まらず、最終的にキャンセル、というケース。
当選金額は全額、提案者全員に分配されるという形になりました。

ネーミングや、ロゴだと数百提案が集まるので、期待値は高いかもですが、webサイトは1ページでも結構な労力。
10案集めるのもなかなか難しいので、期待に応えるものがなく、ただ損をすることも十分考えられます。

❸ー② 制作者の『本気』を期待できない

これは意外と盲点、というか、依頼主には想像しにくい部分かもしれません。

作る側も人間です。
報われない可能性が大きい条件で、なかなか誠心誠意作るというのは難しかったります。

自分はスキルアップのためという動機が大きかったので、割と真剣に作っていました。

が、例えば、一旦作った部分を『修正すれば良くなるかも』と思っても、作り直す気力が湧かない事はありました。
もう一歩の踏ん張りがきかないというか。

その辺で採用が未定の状態では差を感じました。

他のデザイナーさんも同じ5万円でも採用が確定した制作とコンペの制作では力の入れ具合は差があると思います。
どうしても差が出てきてしまうと思います。

本気を出したら心が折れる、と思ったケース

自分の体験じゃなく、他のランサーさんで実際目にしたケース。
ランサーズに参加したてのデザイナーさんが、見るからに全力で作ったデザインをコンペで提案してました。

提案する際にはデザインコンセプトなども一緒に投稿するのですが、だいたいみんな簡単な文章が多いです。
そんな中、そのデザイナーさんは提案文も何千字も書き込んでます。

誠心誠意クライアントさんを思い、身を粉にしてデザインに打ち込んだのがひしひし伝わります。

そのコンペの結末は、コンペ締め切り後、数分でキャンセルという無情のものでした。
延長してないので当選金の分配もなし。提案者への労りのコメントも一切なし。

そのデザイナーさんは予想通り、その後のランサーズでの活動はありません。
『ここで”本気中の本気”を出したら心が折れる』と思った出来事でした。

最後に

1年間CSのデザインコンペ案件を経験した中で感じたデメリットでした。
制作者・依頼主どちらの立場にしろ、参加を検討している方は、一つの経験談として参考にしてもらえたらと思います。

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