音楽をテーマにしたおすすめの映画 まとめ

昨年(2016年)から「音楽を題材にしている映画」をまとめて観ているので、全作品のあらすじと感想を紹介します。
全作品点数をつけ、声を大にしてオススメしたい作品は「評価5つ星以上[殿堂入り]」としています。

作品は次の5つのカテゴリーに分類。
今のところ鑑賞した映画は計19本。

評価5つ星以上
[殿堂入り] 
5作品
「セッション」
「ギター弾きの恋」
「SCHOOL OF ROCK」
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」
「SRサイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者(1、2含む)」
邦画
[フィクション]
7作品
「パッチギ」
「リンダリンダリンダ」
「ソラニン」
「太陽のうた」
「日々ロック」
「少年メリケンサック」
「TOKYO TRIBE」
邦画
[フィクション]
洋画
[フィクション]
1作品
「The Blues Brothers」
洋画
[ドキュメンタリー]
4作品
「THE RUNAWAYS」
「Cobain モンタージュ・オブ・ヘック」
「ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~」
「All Things Must Pass」

何点か補足。
自分は元々映画もドラマもほぼ観ない人間で、ここ数年で観た作品は一桁です。
そんな中、「音楽をテーマにした映画」だけをまとめて観ようと思った理由は、次の3つ。

  • 仕事がWebデザインなので、デザインの勉強の一環で。
  • 音楽鑑賞、ライブに行くのが好きだから。
  • Amazonプライムに加入して、プライムビデオで観られる作品が多いから。

現状は全部プライムビデオで観たものですが、それ以外でも観ていく予定です。
(プライムビデオは視聴期間が終わる可能性もあるので注意)
Amazonプライム・ビデオ

また、この記事のテーマは「実際大量に観た上で、オススメできる作品を決める」というもの。
10個しか観てないだけの「オススメ10選」ではなく。

感想は分量にばらつきがあったり、ちょっと読みにくいかもしれませんが、とりあえず感想は読み飛ばしても(できれば読んで欲しいけど)、「これだけ見て、その中でも殿堂入りのは突出して良かったんだな」と受け取ってもらえたらと思います。

85点以上なら十分オススメできるレベル。
星2つ以下の作品に関しては、一応「観た」という証明くらいの感じです。

あと、ジャンルが音楽なので、そこまで致命的じゃないネタバレならあまり気にせず書いてます。
その点も留意して読んでもらえたらと思います。

評価5つ星以上 <殿堂入り>

「セッション」
〜「これまで観た中で最高の映画は?」と聞かれたら即答する一本〜

出演 マイルズ・テラー、J・K・シモンズ
監督 デミアン・チャゼル
音楽 ジャスティン・ハーウィッツ
公開 2014年
音楽ジャンル ジャズ
レビュー ★★★★★★ 殿堂入り
備考 プライム以外での視聴

【あらすじ】
アンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)は、偉大なジャズドラマーを夢見て、アメリカで最高峰のシェイファー音楽学校に進学。
名指揮者テレンス・フレッチャー(J・K・シモンズ)に見込まれ、彼のバンドのドラマーとして指導を受けることになる。

願ってもいない環境を手に入れたニーマンだが、フレッチャーのレッスンは想像を超える厳しいものだった。

それでも迷いなくドラムに打ち込むニーマン。
しかし、次第に生活や人間関係、そしてドラマーへの道に暗雲が立ち込め始める。

第87回アカデミー賞で助演男優賞にJ・K・シモンズが受賞した他、編集賞、録音賞を受賞。

【感想】
(最初からなんですが…)書きたいことが多すぎたため記事を分けてますので、各記事を参照してください。

「【「セッション」レビュー】「人生で最高の一本は?」と聞かれて即答する一本

「【「セッション」レビュー】クライマックスのフレッチャーの行動はなぜ善と言えるのか?」
「【徹底したミニマニズムの結晶】Webデザイナーがデザイン的観点からみた映画「セッション」の凄さ」

『ギター弾きの恋』
〜 軽妙でユーモア溢れるタッチで描かれる、王道的人間ドラマ 〜

出演 ショーン・ペン, サマンサ・モートン, ユマ・サーマン
監督 ウディ・アレン
音楽 ディック・ハイマン
公開 1999年
音楽ジャンル ジプシー・スウィング
作品ジャンル 洋画・フィクション
レビュー ★★★★★★ 殿堂入り

【あらすじ】
舞台は1930年代、ジャズ全盛期のシカゴ。
ジプシージャズのギタリスト、エメット・レイ(ショーン・ペン)は傲岸不遜を絵に描いたような男だった。だが、ギターの腕は自他共に認める天才。ジャンゴ・ラインハルトを置いて自分を凌ぐ才能はないと自負していた。

ある日、エメットはツアー先で口のきけないハッティ(ユマ・サーマン)をナンパする。
生活を共にするようになるも、エメットは変わらず「アーティストにとって女は遊ぶもの、結婚は眼中にない」と公言してはばからない。
やがて、エメットは尽くしてくれたハッティの元を去る。
そして、新たに付き合い始めた美女ブランチと発作的に結婚するがー。

【感想】
これは最初実話かと思って観始めた。
ドキュメンタリー風に関係者がエメットについて語るシーンがあったり、ジャンゴ・ラインハルトが実在するギタリストなのでエメットも実在する人物だと思い込んでいた。

(ジャンゴ・ラインハルトはエゴラッピンのG 森雅樹がおすすめしてたので、アルバムを借りたことがある。)

しかし、徐々に現実離れした出来事にドキュメンタリー風タッチは演出だと気づく。
正直、この演出に関しては特にプラスにもマイナスにもなっていない気がする。

ウッディ・アレン監督自身も関係者として登場するので、ファンにとっては嬉しいサービスかもしれないが。

と、冷めたコメントから書き始めてしまったが、5つ星以上の面白さだった。
客観的にいっても傑作だが、個人的に5つ星を超えるほど琴線に触れたのはハッティの存在。

どこか掴みきれない、でも目を離せない彼女の一挙手一投足がツボだった。
(異性としてというより、どちらかというと天然っぽいキャラとして。)

泣いてる顔、笑っている顔、リスみたいに料理を口に詰め込んでる顔。
全部良かった。

すでに誰かが指摘していることかもしれないが、この映画はチャップリンの「街の灯」を彷彿とさせた。

特にハッティが初めてエメットのギターを聴くシーン。
徐々に音色に心を奪われ、ハッティの表情がみるみる変わっていく。

このシーンは「街の灯」で盲目だったヒロインがチャップリンの手に触れ、お金を援助してくれた男性が彼だと気づくシーンに重なった。
ハッと息を呑むような表情は観る者もハッとさせ、感情を揺さぶる。

エメットのギターに徐々に表情を変えるハッティ

他にもエメットの異様な自信過剰ぶりや、現実をデフォルメしたような喜劇的な描き方はどこかチャップリンのコメディを意識してるように感じた。

思えば、盲目/口のきけないヒロインというのもただの偶然とは思えない共通点である。

もちろん仮にチャップリンを意識していたとしても、口がきけないという設定はただのオマージュではない。
物語の重要な要素としても機能している。

雄弁だが自分の感情に蓋をしているエメットと、寡黙だが自分の感情にストレートなハッティという対比は物語のテーマのキーとなっている。

作中、エメットは感情を抑えてしまう性格が世界一のギタリストになれない理由だと妻ブランチによって指摘される。

それでもエメットは自分を変えようとは思わない。
「感情は出さない。」「身は固めない。それがアーティストの性」と断言する。

断言する、が、自分の意思に反してハッティへの気持ちが消えることはない。
消えない想いは心の奥でくすぶり続け、やがて蓋をしていたはずの感情は決壊するー。

「失って初めて失ったものの大事さに気づく」というのは、「ありきたりなテーマ」と言えるかもしれない。

「ありきたりな〜」とはよく批判的に使われる表現だが、「どんなテーマか、それは斬新か」というのは実はさして問題ではないと思う。

「作り手がどう描くか、俳優陣がどう演じるか」でテーマはありきたりにも感じるし、普遍的な王道ともなりえる。

「ギター弾きの恋」の場合は後者。
実力のある表現者が真正面から描き切る王道ほど力強いものはないだろう。

『SCHOOL OF ROCK』
〜 エゴの力に感染し、エゴが消化/昇華する瞬間を目の当たりに〜

出演 ジャック・ブラック
監督 リチャード・リンクレイター
音楽 クレイグ・ウェドレン
公開 1999年
音楽ジャンル ロック
作品ジャンル 洋画・フィクション
レビュー ★★★★★★ 殿堂入り

【あらすじ】
エゴの塊のようなギタリスト、デューイ(ジャック・ブラック)は身勝手な性格が原因でバンドをクビになってしまう。
しかし、滞納してる家賃を支払うためにもコンテストに出場して賞金を手に入れたい。

そんな折、ディーイは偶然、同居人への教員の依頼の電話を受ける。
背に腹をかえられない彼は給与のために身分を偽り、教員になりすまして小学校へと潜り込む。

そして、生徒たちにロックを教えコンテストへの出場を果たそうと目論むがー。

【感想】
ロックは色々聴いてるけど、映画で取り上げられているようなロックはあまりタイプではなく、これまで聴いてこなかった。
(AC/DC、レッドツェッペリン、ザ・フー、ドアーズなど。)

なのに、劇中のBGMで流れてる曲は凄く良く聴こえてハッとさせられた。
これは本当に意外だったし、不思議な感覚だった。

理由はひとえにロックへの情熱をほとばしらせ、全身でノッているデューイに感化させられたせいだろう。

今まで偏見なく色んな音楽を聴いてきたつもりだったが、自分の凝り固まった音楽観に気づかされた気分だった。

映画を観た後はちゃんと曲を聴きたくなり早速サントラをレンタル。
この映画のおかげで音楽の好みの幅がグッと広がった気がして嬉しい。

たった二時間で観る人間の感覚を変えてしまうってすごい事だと思う。

ストーリーも良い。
序盤は誰からも好かれない、うだつのあがらない中年ロッカーだったデューイ。
学校で生徒にロックを教え込むあたりから、急に魅力的に映るようになる。

音楽観がガラッと変わったのと同じくらい、デューイに対する印象も変わる。

最初は「賞金目当て」「俺に逆らうな」だった彼が、コンテストでは全く違うセリフを口にする。
「目的は優勝じゃない、最高のステージだ」「これはみんなのバンド」。

そして冒頭ではダイブして観客に避けられ、床に激突していたデューイが、コンテストでは見事ダイブを受け入れられ観客の波に乗る。

登場人物への印象や音楽の好みをガラッと変えてしまう、映画の力を実感した作品だった。

エンディングの”ある趣向”も秀逸。
最後の最後まで楽しんで観ることができた。

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」
〜 観る者を引きつけて止まない絶望までのストーリー 〜

出演 ビョーク
監督 ラース・フォン・トリアー
音楽 ビョーク
音楽ジャンル エレクトロ
作品ジャンル 洋画・フィクション
公開 2000年
レビュー ★★★★★★ 殿堂入り

【あらすじ】
主人公セルマ(ビョーク)は工場で働きながら息子と暮らしているシングルマザー。
セルマは遺伝的に失明するという病気を抱えており、息子だけでも救いたいと手術費のために日々お金を貯めていた。

ある日、大家であるビルから金策の悩みを打ち明けられた彼女は自分の秘密(=失明すること、貯金していること)も教えてしまう。

そして、失明しかけていたセルマはお金の隠し場所をビルに見られてしまいー。

ラース・フォン・トリアー監督の『奇跡の海』、『イディオッツ』に次ぐ「黄金の心」3部作の3作目。
第53回カンヌ国際映画祭ではパルム・ドール、ビョークは主演女優賞を受賞。

ところどころ、空想シーンの中でビョークが歌うミュージカル仕立てになっている。

【感想】
(さすがにこの作品はネタバレなしで書いてます)

久しぶりの2度目の鑑賞。
この機会にもう一度観てみようと思い立ったものの、想像以上に観るのが気が重かった。。

「暗い、重い、救いがない」の3拍子揃ってて、
「なぜ娯楽であるはずの映画を見てこんなに凹まないといけないのか?」
と疑問に思わずにいられない。

それでも観始めたら、映像/登場人物/物語に吸い寄せられるように最後まで見入ってしまう。

凡百の作り手だったら、おそらく単に「趣味が悪い」で片付けられそうな設定と展開。
それでもそうなってないのは非凡としかいいようがないし、傑作だと言わざるおえない(曖昧な結論だけど)。

一つ改めて観て感じたのは、この作品はビョークの音楽性を上手く活かしてるということ。

例えば、最初のミュージカルシーンは工場の勤務中に始まる。
セルマの空想が始まると、周囲の「ギー・ガチャン」といった機械音が不意にリズムカルになっていき、セルマが歌い始める。

メロディとも言えない音がこんなにも有機的で音楽的に感じ、そこに自然に歌をのせて聴かせてしまうって正にビョークの真骨頂のように思えた。

工場での作業中に不意に始まるミュージカルシーン

工場のシーンは特に曲的に絵的にも「declare Independence」を彷彿とさせる。

外見的にも内面的にもスペックの高いキャラクター設定ではないのに、なぜかみんなに愛されているセルマ。
そこに説得力を感じるのもビョーク自身のもつ不思議な魅力があってこそだと思った。

もろ手をあげておすすめはしがたいけど、精神的な調子が悪くないときにぜひ観て欲しい作品である。

「SRサイタマノラッパー3 ロードサイドの逃亡者」
〜 「これが映画だ!これがHIPHOPだ!」と直感させる、インディーズラップムービー 〜

出演 奥野瑛太、駒木根隆介、水澤紳吾、斉藤めぐみ
監督 入江悠
音楽 岩崎太整(ラップ担当:上鈴木崇浩、上鈴木伯周)
公開 2012年
公式サイト http://sr-movie.com/
音楽ジャンル HIPHOP
作品ジャンル 邦画・フィクション
レビュー ★★★★★★ 殿堂入り

【あらすじ】
埼玉で活動する3人組HIPHOPグループ「SHO-GUNG(ショーグン)」。MCの一人マイティ(奥野瑛太)は2人を残して、上京を決意する。
上京から2年、マイティは勢いのあるグループ「極悪鳥」へのメンバー入りを狙って下積み生活を送るも、不満が爆発。メンバーに暴行し、逃亡生活を余儀なくされる。

HIPHOPを捨てたつもりだったマイティだが、逃亡先の栃木でHIPHOPイベントの運営に参加。
偶然イベントに参加していた「SHO-GUNG」メンバーの二人と、予期せぬ再会を果たすことになるー。

「SRサイタマノラッパー」3部作の完結編。

【感想】
B級感のあるDVDの表紙に、聞いたことのない主要出演陣、監督。
まして、この前に観たラップ映画は0点を叩き出した「TOKYO TRIBE」…。

他のレビューを確認しなかったこともあり、何の期待もしないで観始めた。
シリーズの1、2とばして、いきなり完結編からでもいいかと思うくらい全く期待してなかった。
(Amazonプライムで3だけ視聴できた。)

が、そんな先入観を見事に吹き飛ばされた。
面白い。そして熱い。

鑑賞後ネットで多く目にした絶賛レビューも納得の内容だった。

確かにインディーズ作品で、チープに感じる部分がなかったとは言えない。
演技も、ストーリーも特筆すべき部分は思い浮かばないし、肝心のSHO-GUNGのMC陣(マイティ以外の本職じゃない二人)のラップも、決してレベルが高いとは思えない。

それでも、がっつりラップシーンで鷲掴みにされ、感動させられた。
クライマックス、編集なしの10分以上の長回しで撮られたSHO-GUNG3人の「再会」シーンは鳥肌ものだった。

期せずして再会するSHO-GUNGの3人

例えば、「映画とは?」「HIPHOPとは?」と質問されても、上手く言い表せる言葉は見つからない。
でも、「サイタマノラッパー」は映画とHIPHOPの真髄らしきものを捉えてる、と直感的に思わされた。

そう実感させる何かがある作品だった。

中盤のSHO-GUNGの二人と日光の「征夷大将軍」の3人のセッション(?)も良い。
徐々にラップで場の空気感を変えてしまう熱がじんじんと伝わってくる。

先に観た「TOKYO TRIBE」の感想で「ラップは特殊。役者がするものではない」と書いたのは、撤回しておく。
全然サムくないし凄くかっこよかった。

星5つは確実として殿堂入りにするかは若干迷ったが、「一人でも多くの人に観て欲しい」という気持ちが強かったので殿堂入りにした。

3からでもついてけないことはないけど、素晴らしい作品なので1から観ることをオススメする。
自分もこれから1、2を見たいと思う。

【追記】
1、2も観たので合わせてここで紹介する。両方ともamazonプライムではなくツタヤでのレンタル。

「SRサイタマノラッパー」

出演 駒木根隆介、水澤紳吾、杉山彦々、奥野瑛太、みひろ
公開 2008年
公式サイト http://sr1.sr-movie.com/
レビュー ★★★★☆ 80点

「SRサイタマノラッパー2女子ラッパー☆傷だらけのライム」

出演 山田真歩、安藤サクラ、桜井ふみ、増田くみ、加藤真弓
公開 2010年
公式サイト http://sr2.sr-movie.com/
レビュー ★★★★★★ 殿堂入り

「SRサイタマノラッパー」は3と同じくSHO-GUNGがメイン。
3ではマイティが主役だったが、1ではマイティ以外のIKKUとTOMが主人公。

2はSHO-GUNGも出てくるが、端役。主役は群馬の女性HIPHOPグループ・B Hack。
(なので、正確には「SR サイタマノラッパー2」というより、「GR グンマノラッパー1」。)

簡単に感想をいうと、「1」は正直そこまで。
良い映画だし2、3を考えると必見と言えるけど、続編ほどの力は感じなかった。

「1から観ることをオススメする。」と書いたけど、んー2、3から観る方がオススメかもしれない。

2も殿堂入り。
これも作品全体の評価としては殿堂入りとまでは言えない。
でも、「殿堂入りにするほどオススメしたい!」と思わせる作品だった。

主役の山田真歩をはじめ、ラップは上手くないし、かっこよくもないし、そもそもビジュアルからしてHIPHOPとは程遠い。
なのになぜか単なる上部の設定ではなく、HIPHOPの核みたいなものを感じさせる。

想像だけど、もし作り手がHIPHOPを知らない人だったら、見た目から設定から「HIPHOPっぽい」要素ばかりを詰め込むのではないだろうか。

それが登場人物はサブカル系女子、風俗嬢、旅館屋の娘。
舞台は川やプールやこんにゃく屋や選挙や葬式とHIPHOPのイメージからは程遠いものばかり。

それでもHIPHOPを描けてしまうのは、作り手の造詣の深さの裏返しであり、自信の表れなのかもしれない。

入江監督のプロフィールや経歴は全然知らないけど、なんとなくそう感じられた。
とにかく3同様、言葉では掴みきれない不思議な力と魅力をもった作品である。

邦画 <フィクション>

「パッチギ」

出演 塩谷瞬、沢尻エリカ、高岡蒼佑
監督 井筒和幸
音楽 加藤和彦
公開 2005年
音楽ジャンル フォーク
レビュー ★★★★☆ 90点

【あらすじ】
舞台は1968年の京都。
府立東高校、朝鮮高校の生徒の間で抗争が絶えない中、主人公松山康介(塩谷瞬)はサッカーの親善試合を申し込みに朝鮮高校を訪れる。
そこで康介はフルートを演奏していたキョンジャ(沢尻エリカ)に一目惚れ。彼女の気をひくためにギターを買い、キョンジャが演奏していた「イムジン河」を練習し始める。

一方、生徒達の抗争は激化の一途をたどり、ついには死者を出す事態にまでに発展するー。

タイトルの「パッチギ!」は「突き破る」「頭突き」という意味のハングル語。
激しいケンカと切ない恋と友情を描いた青春活劇。

【感想】
10年ぶりの2度目の鑑賞。
2度目も面白かったが、1度目の方がストレートに感動した記憶がある。

それにしてもこの10年での沢尻、塩谷、高岡という顔ぶれのイメージの変化がなかなかスゴイ。。
沢尻、塩谷の清純キャラは今見るとギャップを感じざるおえなく、若干気になりつつの鑑賞となった。

とはいえ、演技は文句なく良かったし、脇を固める個性的な俳優陣もみんな光っていた。
フォーククルセイダーズの「イムジン河」「悲しくてやりきれない」といった劇中歌も魅力的。雰囲気的にもテーマ的にも映画に欠かせない要素になっている。

クライマックス、塩谷瞬が「悲しくてやりきれない」を歌いながら感情を爆発させるシーンは10年前も今回も目頭が熱くなった。

確かに「南北分断、在日朝鮮人への差別、軋轢」といったテーマは重めではあるし、無視するべきものでもないと思う。
でも、鑑賞中は一旦脇に置いておいて何も考えずに楽しんで観たい作品だ。

『リンダリンダリンダ』

出演 ペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織(Base Ball Bear)
監督 山下敦弘
音楽 ジェームス・イハ(元スマパン)
主題歌 「終わらない歌」THE BLUE HEARTS
公開 2005年
音楽ジャンル パンク
レビュー ★★★★☆ 90点

【あらすじ】
高校文化祭の演し物のため、4人の女子高生達が急遽バンドを結成。
紆余曲折を経ながら4人はなんとかライブにこぎつけ、ブルーハーツの『リンダリンダ』を披露する。

【感想】
内容的には特に劇的なドラマが巻き起こるわけではない。
でも、少しずつクセのあるキャラクターの何気ない会話や表情に味わいがあって、毎シーン楽しめた。

何より主演のペ・ドゥナはヒロトファンの自分がみても適役。
彼女以外だったら成立しないんじゃないかと思う位ハマってた。

どこか言動が独特でチャーミングで、それがとても自然体で良かった。

個人的にある意味一番テンション上がったのは、ブルハを演奏するキッカケとなったシーン。

メンバーが部室で話している時、ジッタリンジンの『プレゼント』の歌詞がなぜかツボに入って笑う香椎由宇。
『プレゼント』のMDをかけてみると、流れた曲は『リンダリンダ』だった。

自分は、大のジッタファンでもあるので、このジッタ→ブルハの流れに無性に嬉しくなる。

ちなみに先生役はヒロトの実弟の俳優 河本雅裕。
ファンでなくても楽しめるし、ファンであればさらに見所が増える一本だ。

『ソラニン』

出演 宮崎あおい、高良健吾、桐谷健太、近藤洋一(サンボマスター)、伊藤歩
監督 三木孝浩
原作 浅野いにお
音楽 ent
主題歌 「ソラニン」ASIAN KUNG-FU GENERATION
公開 2010年
音楽ジャンル ロック
レビュー ★★★★☆ 85点

【あらすじ】
主人公 芽衣子(宮崎あおい)と種田(高良健吾)の恋愛模様を軸に巡るモラトリアムの終わりの物語。

大学の軽音サークルで出会い、卒業後も付き合いを続け、同棲生活を送る芽衣子と種田。
会社に嫌気がさした芽衣子が退職するところから二人の日常は転がり始める。

仕事のかたわらバンドを続ける種田も、芽衣子に葉っぱをかけられ音楽に専念するため退職。

しかし、全力で作ったデモテープは実を結ばず、芽衣子との関係にも亀裂が走る。
そんな中種田は自分なりの答えを掴んだのだがー。

【感想】
『ソラニン』は大学の時漫画を扱った授業でレポートの題材にした作品だった。

レポートの内容は今でもよく覚えている。
『浅野はそれまで描いてきたテーマをソラニンで結実させている』というものだった。

『それまでのテーマ』とはざっくり言うと、『日常への不満、閉塞感』。
それは随所のシーンに散りばめられた『下降』のイメージで表されている。

手応えのない日常に、自分の手から『今』も『未来』もこぼれ落ちるかのように、浅野作品では落ちるシーンが多い。

『ソラニン』も下降のイメージが出てくるが、最後に『上昇』のイメージに転化し、ある種の結実をしている点が他作品とは大きく異なる。

『ソラニン』はそのイメージの移り変わりの集大成と言える。

もう少し具体的に説明すると、
芽衣子の『芽』と種田の『種』は花になる前の状態。

(ちなみに種田はアイドルのバックバンドの話を蹴ったが、そのアイドルの名前は『花村』。つまり、現実的に実を結んでるのはバカにしているアイドル)

タイトルのソラニンは、『空』とジャガイモの芽にある毒素をかけたもの。
芽衣子が一番『腐って』寝込んでいたシーンでは、放置していたジャガイモからも芽が出ている。

その後のさらなるどん底から、芽衣子はバンドを組むことを決意し、種田が作った『ソラニン』をライブハウスで歌い切る。

そこで芽衣子は、自分自身がスポットライトを浴びて輝く。
いつかは仲間たちと見上げるだけだった『花火』のように。

一過性の儚い『上昇』と『結実』かもしれないが、ライブをやり遂げた芽衣子は次の一歩を踏み出す。

そういったテーマを映画は忠実に再現していて、他にもパラシュートや風船といった『上昇/下降』のモチーフもそのまま取り入れられている。

と、そんな解釈はさておき、映画は純粋に面白かった。

特に宮崎あおいの演技がすごく良い。
宮崎あおいの表情を見て、浅野いにおは『ここまでの表情は描けない』と敗北感を覚えたのではないかとすら思った。

ただ、最後の歌はやはりプロに及ぶものではなく。
エンディングで流れたアジカンの歌を聴いて、今度は『ゴッチ凄い』となった。やはり餅は餅屋だなと。

そう考えると、ベースの近藤洋一(サンボマスター)は最初は普通に役者だと思った程だったのは何気に凄い。
あの役者陣の中で、しかも初演技で。

こういうアーティストは結構いるけど、なんでサラッとこなせるのか昔から不思議に思う。

『太陽のうた』

出演 YUI、塚本高史
監督 小泉徳宏
音楽 YUI・椎名KAY太
主題歌 「Good-bye days」YUI for 雨音薫
公開 2006年
音楽ジャンル ポップス
レビュー ★★★★☆ 85点

【あらすじ】
主人公の女子高生、雨音薫(YUI)は太陽の光に当たれない難病を患っているため、昼夜逆転した生活を送っている。
ギター片手に夜の街に繰り出し、一人歌う日々。
そんな日常の中、薫は家の窓から見かけた少年、藤代孝治(塚本高史)に出会い恋をするー。

【感想】
これは、設定からして「死」の結末を予感させる。

個人的に死が予定された物語はすごく苦手だ。
全然楽しめないし、進んで観る気が起きない。

でも、この作品は予想通りの結末を迎えながら、不思議と哀愁を誘うものではなかった。
むしろ何かをやり遂げたような清々しさすら感じた。

それがこの映画が他の「闘病×恋愛物」とは一線を画してるところだし、タイトルが「太陽のうた」である所以だろう。

YUIの演技は、宮崎あおいの演技を観た後だったので、さすがにぎこちなさが否めなかった。
でも、その初々しさがキャラに活きていて、吉と出ていたように思う。

普通はマイナスな要素を好転させるというのは、何においても良作の証と言えるだろう。

「日々ロック」

出演 野村周平、二階堂ふみ
監督 入江悠
音楽 いしわたり淳治(元SUPERCAR)
原作 「日々ロック」榎屋克優
公開 2014年
公式サイト http://hibirock.jp/
音楽ジャンル ロック
レビュー ★★☆☆☆ 40点

【あらすじ】
主人公 日々沼拓郎(野村周平)が売れないロックバンド、『THEロックオンロールブラザーズ』でライブをしていると突然トップアイドルの宇田川咲(二階堂ふみ)がステージに乱入。
拓郎のことを気に入った咲は楽曲提供を依頼。咲の知り合いの音楽プロデューサーにバンドを観てもらう機会まで作ってもらう。
しかし、演奏を観てもらうとはなにもかけてもらえず、バンドは活動を休止。

バラバラになった拓郎たちだったが、その後、咲の余命が短いことを知った3人は再び動き出すー。

【感想】
漫画が原作なだけあって、ノリがマンガ的。
主人公がずっと異常に挙動不審だったり、展開も唐突で突飛。

そういうテイストに優劣をつけるつもりは全然なく、好みの問題も大きかったとは思う。
自分的には全くハマらなかった。

ラスト、拓郎たちがどしゃぶりの雨の中、入院してる咲に向かって演奏するシーンは結構良かった。
ここだけ3回見返したほど。

野村周平、二階堂ふみも良い表情してる。

『少年メリケンサック』

出演 宮崎あおい、佐藤浩市
監督 宮藤官九郎
音楽 向井秀徳
主題歌 「ニューヨークマラソン」少年メリケンサック
公開 2009年
音楽ジャンル パンク
レビュー ★★☆☆☆ 30点

【あらすじ】
レコード会社のOLかんな(宮崎あおい)はネットの動画でパンクバンド、少年メリケンサックを発見。
プロモーデョンを手がけることになるが、その動画は数十年のもので、今はただのおっさんとなっていた。
しかし、全国ツアーは敢行されることになりー。

【感想】
宮藤官九郎のノリが嫌いなわけではない自分でも2時間はしんどかった。
1時間弱だったら、もっと楽しめたかもしれない。

木村祐一の演技もキビしい。

「TOKYO TRIBE」

出演 鈴木亮平、YOUNG DAIS、清野菜名、染谷将太、 窪塚洋介、 竹内力
監督 園子温
原作 「TOKYO TRIBE」井上三太
公開 2014年
音楽ジャンル HIPHOP
レビュー ☆☆☆☆☆ 0点

【あらすじ】
中盤くらいまでしか観ていなく、あらすじもよくわからなかったので略…。

井上三太の同名漫画を映画化したラップミュージカル。

【感想】
去年一度観た際は、観るに耐えず途中で挫折。
今年感想を書くにあたって、「書くからには最後まで観てからするのが礼儀!」と、再度鑑賞。

そんな強い気持ちで臨んだものの、序盤の染谷将太のラップを聴いた瞬間に、
「あ、このノリが2時間続くんだ…」
と思うと気が遠くなって心が折れる。。

0点つけるのはさすがに気がひけるけど、10分も鑑賞に耐えなかったので仕方ない。。

一言だけ言えば、
ラップは歌や演技が上手ければ「さまになる」わけでない、特殊なジャンルだと再認識した。

染谷将太という素晴らしい俳優をもってしても、この有り様になってしまうということは、もはやラップミュージカルという試み自体間違いだったとしか思えない。

冒頭のリリックは盛大なブーメランのようにしか思えなかった。

ここなら半端ねえよ 半端すんな
半端するぐれぇなら はなから何もすんな

2度目の鑑賞後、「そういえば、ラッパーで映画評論をしてる宇多丸はどう言ってるのだろう?」と検索。

フォローや美点も挙げてたのでここだけ切り取るのは悪いけど、曰く、
「(ストーリーとして)序盤の40分くらいはクソつまらない」「(ヒップホップとしては)最悪の事態は免れてた」

うーん、(本業じゃない出演者の)ラップも大惨事だった気はするけど、いずれにしろ序盤の40分(も)クソだと聞いて2度目は数分で辞めて正解だった。

これまで園子温監督は4作品見ていて、2つ三振(「TOKYO TRIBE」「HAZARD」)、2つホームラン(「ヒミズ」「冷たい熱帯魚」)。

ラップミュージカルという無謀な挑戦をしたり、監督として有名になってから漫才コンビを組んだり、そういう守りに入らない姿勢は本当にすごい人だなと尊敬する。
(嫌みや皮肉ではなく)

凡庸なヒット作品なら今後はあえて手に取らないけど、園子温作品はまたいつかホームランを期待して観てしまうと思う。

洋画 <フィクション>

「The Blues Brothers(ブルース・ブラザーズ)」

出演 ジョン・ベルーシ、ダン・エイクロイド、レイ・チャールズ、ジェームズ・ブラウン、アレサ・フランクリン、キャブ・キャロウェイ
監督 ジョン・ランディス
公開 1980年
音楽ジャンル ブルース、R&B、ソウルミュージック
レビュー ★★★★★ 95点

【あらすじ】
兄のジェイク(ジョン・ベルーシ)は強盗による3年の刑期を務め終え出所し、弟のエルウッド(ダン・エイクロイド)と再会する。

二人が育った孤児院に訪れると、孤児院は固定資産税の未払いのため立ち退きの危機にあっていた。

その後、教会でジェームス牧師(ジェームス・ブラウン)の「説教」を聞いたジェイクは「天の啓示」を受ける。

啓示を受けた二人は、バンドを組み、音楽で孤児院を救う資金を作ることを決意。
昔のバンド仲間や楽器を集めながら、音楽活動に邁進する。

道中、警察やらネオナチ(?)に目をつけられつつも、見事コンサートの開催やレコード会社との契約を果たすことになるがー。

【感想】
映画のジャンルとしてはコメディやミュージカルの要素が強い作品。
そのくらいの予備知識は入れて観た方が良いかと思う。

というのも予備知識なしで観た自分は序盤、状況が飲み込めずポカンとすることになったので。
唐突に普通のストーリー物ではありえないことが起こったり、いきなりジェームス・ブラウンが歌いだしたり、「これは一体…」となった。

(作品自体は有名だし、サントラをレンタルしたことがあるので知っていた)

感想を二言でまとめると、「とにかくスケールがデカい」、「荒唐無稽で痛快」。

どこがどうかは伝えにくいけど、傑作がもつスケール感、唯一無二感がびりびり伝わってくる。
そして、なんだかよくわからないけど、観ていて楽しい。

序盤はノリについていけなかったところがあるが、徐々にグイグイ引き込まれて最後まで一気に見終えた。

評価が殿堂入りに届かなかったのは、無粋を承知で言えば、Blues Brothersの歌があまり魅力的ではなかったのが一つ。
(コンサートで大ホールの観衆をわかしているシーンとか、「そこまで力があるパフォーマンスかな」と冷めた感じで観てしまった)

もう一つは、やはりコメディとして観てもツボがわからないシーンがあったこと。
「謎の女が兄弟を殺そうと何度も襲うが、二人は命拾いし一切ノーリアクション」というシーンとか。

この辺は笑いの文化や時代が違うので仕方ない部分もあるし、むしろそれでも楽しめたという点を改めて強調しておきたい。

もちろん、豪華な客演ミュージシャン陣も含め、文句なしにおすすめしたい作品だ。

洋画 <ドキュメンタリー>

『THE RUNAWAYS』

出演 クリステン・スチュワート, ダコタ・ファニング, マイケル・シャノン
監督 フローリア・シジスモンディ
公開 2010年
音楽ジャンル ロック
レビュー ★★★★☆ 80点

【あらすじ】
1970年代後半に活動した、アメリカのガールズロックバンド、ザ・ランナウェイズのドキュメンタリー映画。

音楽プロデューサー、キム(マイケル・シャノン)によって、ジョーン(クリステン・スチュワート)やシェリー(ダコタ・ファニング)が引き合わされ、バンドを結成。
「チェリー・ボム」のヒットで一躍スターになるも、ボーカルのシェリーはドラッグに溺れ、メンバーや家族との不協和音の中で、バンドは崩壊していくー。

【感想】
これは「恋するギター弾き」とは逆にフィクションだと勘違いして観始めた。

途中でふと「そういえばランナウェイズって聞いたことあるな」とネットで確認。
メンバーのジョーンが後に結成するJoan Jett & the Blackheartsの「I Love Rock N Roll」(原曲はThe Arrows)が有名なのでその関連で目にしたことがあったと思い至る。

フィクションだとすると「なぜあえてそういう設定なのか」疑問だった部分があったので、色々納得がいった。
例えば、わざわざ来日公演してるシーンとか。

一番の見所はクリステン・スチュワート演じるジョーンの格好良さ。
正直ストーリーは特におすすめするほどではなかったけど、ジョーンのシーンは一見の価値があると思う。

演奏シーンだけでなく、ただ居るだけで男女問わず見惚れてしまうほどカッコイイ。

あと余談だけど、驚いたのが主役がダコタ・ファニングだと後で知ったこと。
ダコタ・ファニングといえば子役(5才位)の印象しかなかったので大人びた容姿で全く彼女とは気づかなかった。

驚いたというのは、「あの子役がこれほど成長するほどに年月が経っていたのか」という驚き。
子役の成長っぷりほど年月の経過を体感させるものはないなとつくづく思った…。

『Cobain モンタージュ・オブ・ヘック』

出演 カート・コバーン、コートニー・ラヴ
監督 ブレット・モーゲン
公開 2015年
音楽ジャンル ロック
レビュー

【あらすじ】
Nirvanaは1991年の2ndアルバム「NEVER MIND」で全世界に旋風を巻き起こしたアメリカのロックバンド。
今なお、ロック史の中で揺るがない存在感を放っている。

この作品は「NEVER MIND」からわずか数年で自殺した、バンドのヴォーカリスト、カート・コバーンのドキュメンタリー。
カートの幼少期から、自死に至るまでの人生を、アニメーションや身内らのインタビュー、カート自身の手記によって浮かび上がらせている。

【感想】
★評価はつけ難いのでなし。
決して明るい内容でないのは承知していたが、想像以上に重かった。
見ていると、閉じ込められた部屋の中でじわじわと水攻めにあってるような息苦しさを覚えた。

ファンでないならわざわざ好き好んで観る内容ではないだろう。

そういう自分もそこまで熱心なファンではなく、たまにCDを聴く程度。
でも、すごいバンドだと思うし、自殺の経緯が気になったので興味深く観始めた。

息苦しさを覚えたのは、「何で自殺したんだろう」位に思っていたのが、「あーこの人は自殺するのが必然だったんだな」という程に自殺という結末に納得できてしまったからだ。

作品を鑑賞後、カートが残した遺書も読んでみると、さらに絶望感が伝わってくるものだった。

一番印象的だったのが次の一文。
「ステージに出て行く前にタイムカードでも押しているかのような気分にかられていた。」

自分もライブにはよく行くので、あの熱狂の空間が義務感の産物に成り果てていたということに、ありありと虚無感が伝わってきた。

音楽にはマイナスな感情を燃料にプラスに転じて発散するという側面があると思う。

作品を見て改めて感じたのは、Nirvanaの音楽はマイナスをプラスに転じず、むしろマイナスをそのまま増幅させて吐き出しているようだということ。

これからはアルバムを聴くたびに、鑑賞中の痛々しい感情を呼び覚ましそうで、そういう意味ではある程度心して観た方がいい作品だと思う。

「ジェームス・ブラウン ~最高の魂(ソウル)を持つ男~」

出演 チャドウィック・ボーズマン、ネルサン・エリス、ダン・エイクロイド、ヴィオラ・デイヴィ
監督 テイト・テイラー
公開 2014年
公式サイト http://jamesbrown-movie.jp/(音量注意)
音楽ジャンル ファンク
レビュー ★★★★☆ 80点

【あらすじ】
ファンクの帝王、ジェームス・ブラウンの半生を描いた伝記映画。

貧しかった幼年期から、窃盗の罪で刑務所に収監された青年時代、そして、アーティストとしての全盛期の歴史がひもとかれる。
伝説にまでのぼりつめたジェームス・ブラウンの光と影とはー。

【感想】
ドキュメンタリー映画の評価のポイントの一つとして、「ファンでなくても伝わるか」ということが挙げられると思う。

自分は全く詳しくないので、そういう意味でこの作品はちょっと不親切だった。
ジェームス・ブラウン(以下、JB)の史実を知っていないと、理解できない箇所がある。

始まってすぐのシーンから次のような感じ。
保険セミナーの場にJBがショットガンを持って現れ、意味不明な口上をたれて、銃をぶっ放す。

…ただただ「わけがわからない」としか言いようがない。
後半、この続きで警察官とカーチェイスするシーンも同様。

あとで確認したら薬物を吸引後に引き起こした出来事で、この騒動で実刑6年の判決を受けたらしい。
(よく見ると後半では麻薬らしきものを吸ってる場面もあるが、初見では気づかなかった)

負の歴史として描いているんだろうけど、それ以前に意味不明で何を思っていいのやらという感じだった。

また、時系列が前後してつなぎ合わされた構成になっている点もやや難あり。
特に登場人物がみんな黒人なので、誰が誰だったかパッと見でわかりづらかった。

一方で、もっと重要な音楽映画のポイント、ライブシーンに関してはすごく良かった。

歌は思い切り口パクで、若干口の動きがズレてるのはご愛嬌。
それをカバーして余りあるほど、初めてみるJBのパフォーマンス / チャドウィック・ボーズマンのダンスは見応えがあった。

後半、JBの「踊りも永遠に真似されるだろう」というセリフがある。

自分は以前、在日ファンクの「爆弾こわい」のMVを見たときに、浜野謙太のパフォーマンスをすごく斬新に感じて何度も見返したことがある。

でも、この映画をみると、その動きはまさにJBを「真似」したものだとわかる。
つまり、自分は一度在日ファンクを通して、JBに衝撃を受けているということだ。

しかも、自分自身で「永遠に真似されるだろう」と予言してるあたりカッコ良すぎる。
「ルーツは偉大だな」と思った。

『All Things Must Pass』

出演 ラス・ソロモン(タワーレコード創業者)、ブルース・スプリングスティーン、エルトン・ジョン
監督 コリン・ハンクス
公開 2015年
レビュー ★★★★☆ 80点

【あらすじ】
1960年にアメリカで創業したタワーレコードはかつて5大陸200店舗まで拡大し、世界的な大企業に成長した。
しかし、やがて経営難に陥り、アメリカのタワーレコードは廃業。今残っているのは日本で展開する80数店のみとなった。

この作品はそんなタワーレコードの盛衰の歴史を辿るドキュメンタリー。
創業者のラス・ソロモンや従業員、エルトン・ジョンといったショップの常連だったアーティストの独白を元に構成されている。

【感想】
「NO MUSIC,NO LIFE」というキャッチフレーズが有名で、名前自体は馴染みのあるタワーレコード。
でも、事業の成り立ちや歴史は知る由もなかったので、興味深い内容だった。

そもそも日本以外には残っていないことから初めて知った事実だった。
「NO MUSIC,NO LIFE」というフレーズも日本で生まれ、逆輸入される形でアメリカでも取り入れられたらしい。

後半、創業者のラス・ソロモンが日本のタワーレコードを訪れ、「私達がしてきたことは正しかったと証明してくれてる」と述懐するシーンがある。

半世紀以上のタワレコの歴史を見渡した後に、日本でだけ生き残っているという事実を知るとなんだか感慨深いものがあった。

ラス・ソロモンや従業員が全人生をかけて作り上げてきたタワレコが日本でだけでも残っていて本当に良かったな、という気分になる。

でも、なぜ日本だけ堅調な売り上げを上げられたのか?(上げられているのか?)
その辺りの説明は特になかったので、どういう事情なのかちょっと気になった。