ストーン・ローゼズが22年ぶりの単独来日公演を果たした。

公演は日本武道館での2days。
自分は初日に観に行ってきたのでその感想を書いていきたい。

最初にファン歴を書いておくと大体10年ちょっと。
そこまで特別な思い入れはないかもしれないけど、10年聴き続けて実際ライブに足を運んでるので十分熱心なファンではある。

個人的にも客観的に考えても1st「the stone roses」は全ロックアルバムの中でもベスト10に入る名盤中の名盤。
この来日公演も迷うことなく販売初日にチケットを購入した。

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ストーン・ローゼズ来日公演の感想

無事公演が実現されたことがまず何より

ファンなら知っての通り、本来は2016年の6月2日3日に来日公演は行われる予定だった。

それが、5月前半にドラマーのレニが肋骨を骨折。
「最低1ヶ月の療養が必要」とのことで公演が急遽延期に。

2016年ももちろんチケットを取っていたので、盛大にガッカリさせられた。

こんな言い方はアレだけど、「全治1ヶ月ならやろうと思えばやれるのでは」と思ったし、チケットが売り切れてない状況だったのでそんな事情もあるのかな、とも思ってしまった。

実際、数日後の6月7日のヴィクトリア・シアターではライブを行っているので、余計「本当にできなかったのかな」と。

キャンセル後もしばらく尾を引いて残っていた落胆と不信。
今回もいざ武道館の席についても本当に始まるのか信じきれずにいた(疑いすぎ)。

でも、ライブ途中にレニが勝手に帰って強制終了したこともあるので、何が起こってもおかしくはない…。

幸い、不安は杞憂に終わり、開演予定の19時過ぎには照明が暗転。

「I wanna be adored」のイントロが始まった瞬間、ようやく実感を伴って「生のストーンローゼズが見れる!聴ける!」と喜べた。

開演後、予想外だったイアンの歌声…

せっかくの来日ライブに水を差すのは悪いけど、嘘を書いてもしょうがないので本音を書く。

テンションが一気に上がった「I wanna be adored」のイントロで、待ちに待ったイアンの歌が始まった瞬間、「ん…?」となった。

普通はさらにテンションが上がるところで、ブレーキがかかる。
思ってたより、声に力がない、というか。

武道館では席がスタンド2階で、普段のライブは1階立ち見のスピーカー前が定位置なので、音が物足りなく感じるのは仕方ないとは思う。

別会場で間近で見たエゴラッピンも、武道館スタンド2階でみた際は音圧も迫力もどうしても劣って感じた。

今回もそういう理由かなと思ったけど、違和感は徐々に確信に。
なにしろ、その後も普通に音を外してるシーンが少なくなかった。

最初は、「ブランクと加齢による劣化」かと純粋に残念な気持ちになった。
往年のライブが見てみたかったなと。

が、のちにネットの感想をみるとイアンの音痴は昔かららしい。

しかも大方が「今回も安定の音痴っぷり。いつもより良い」と、むしろ肯定的に捉えていて、ガッカリした自分が無知だったのか、とよくわからない反省をした。

メディアはどう書いてるのか気になって確認したら、メディアですら次のような感じ。

オープニングの“I Wanna Be Adored”は若干の緊張感を孕みつつのスタートとなった。直立不動のイアンが珍しく音をほぼ外さず歌いきったのも含めて、非常に丁寧なパフォーマンスだ。

やっぱり今夜のイアン・ブラウンはイアン・ブラウンとは思えないほど歌が上手い。なにしろこの曲のアカペラ・パートですら音階が迷子にならず、素直に旋律に乗って(注:あくまでイアン・ブラウン比)歌いきってしまうのだ。

真面目に淡々と書かれていると、どこか滑稽で面白い。
とにかく上手い下手以前に音を外してないだけで良しとすべきらしい。

ただやっぱり普通に伝説のアーティストとして期待してた者としては、ちょっと残念なポイントだった。

ライブはそれでも最高だった。

ネガティブなことも書いたけど、全体的には「楽しかった」の一言。

イアンの歌は残念と書いたけど、それでもストーンローゼズにはあの声しか考えられない。
どんなに歌が上手くても、イアン以外ではストーンローゼズの曲は成立しないし、想像すらできない。

それだけ奇跡的なバランスで成立してる唯一無二のバンドだと思う。

それにあの歌で武道館いっぱいの客を沸かせてるって、よく考えたらそれはそれですごい。
より存在の不可思議さと神秘性が増したとすら感じる(皮肉にしか聞こえないかもしれないけど)。

あと意外だったのは、一番魅せられたのがレニのドラムだったこと。

自分自身楽器をやらないので、普段ヴォーカル以外に注目することはほとんどない。
それが自然とドラムの音を追うように曲を聴いていた。

特に最後のレニのソロからの「I Am the Resurrection」は最高。
ストーンローゼズの曲の良さは、ドラムの貢献度が大きいと今更ながら思った。

昨年来日キャンセルの原因となったのも帳消しになったし、本調子でなければあのプレイはできないだろうと納得の演奏だった。

ライブ動画見るとアレンジしてるのかズレてるのかわからない箇所もあるけど、やはり安定感にかける印象。

そして、それこそ今更だが、ストーンローゼズの楽曲は本当に名曲揃い。
生で聴いてしみじみ実感した。

曲単位でも素晴らしいけど、ストーンローゼズの曲には全体を通して立ち上がってくる不思議な作用がある。

一曲一曲が神がかった名曲なのに、聴き重ねるごとに高揚感を高めていくようなマジックが宿ってる。

これはアルバムも同じで、じわじわと、でも確実に気持ちがのせられていく。

たぶん最後の曲だろうと予感させた「I Am the Resurrection」では、「あー終わってほしくない」という名残惜しさでいっぱいだった。

光の奔流のような音にこのままずっと流されていたいような。
そして、なんだかんだいって、そう思わされたのがこのライブの全てだと思う。

帰りに、翌日のアリーナ席分のチケットが残っていて6,000円(3,000円引き)で販売されていた。
できれば買いたかったけど次の日は予定があったため、断念。

というか、去年もそうだけど、ストーンローゼズで2日埋まらないって、なんだか寂しい。
ライブの余韻とともにそんな釈然としない気持ちになりながら武道館を後にした。

ストーン・ローゼズ来日公演 その他所感

その他の所感やライブであったことをメモ。

唯一の日本語のMCが「カタガイタイ」

公演中はたぶん言葉の事情もあってほぼMCはなし。
数曲やって発したほぼ唯一の日本語MCが見出しの「カタガイタイ、カタガイタイ」だった。

何かしら日本語で喋ろうとしたにしても、なんでよりによってそれなんだという(笑)
会場にも温かい笑いが起こっていた。

みんな年齢を考えたら若いけど、やっぱり年をとったんだなーと思う。

ばら撒き過ぎの手持ちのタンバリン(?)

序盤からイアンはサービスで手持ちのタンバリンのような楽器をアリーナ前列の客に投げていた。

最初は「羨ましいな」と思って見てたら、それからもバンバン投げる。
後半は羨ましい以上にそのタンバリンは一体何個あるんだ?ということが気になっていた。(10個以上は余裕で投げてた)

これもライブでは恒例の光景だったのだろうか?

独特なイアンのパフォーマンス

ライブでのvoのパフォーマンスは人それぞれで、その点もイアンは独特だった。
両足を左右交互に出したノリ方や、プロペラみたいに手を回して一周したり、ミッキーみたいな(?)ポーズを何回も決めたり。

カッコイイわけじゃないけど、やっぱり独特なオーラと魅力を持った人だなと思った。

「Elizabeth My Dear」での擬音

意外にも1stの「Elizabeth My Dear」も演奏。
後半のピストルの発射音をイアン自身が口真似で入れていたのは一興だった。

今年はなかったサポートアクトについて

去年はTHE BAWDIESのサポートアクトがある予定だったので、THE BAWDIESの分も損した気分になった。
でも、今年サポートアクトなしで見て、前座はなしで正解だった気がした。

ストーンローゼズの演奏と余韻だけに浸れてそれでよかったように思う。

アンコールは無し

なんとなくアンコールは無さそうだったので、元々期待はしてなかった。
でも、メンバーがはけた後に、会場から「アンコール」の声が。

「お、あるのか?」と思ったら、すぐに公演の終了を伝えるアナウンスが流れていた。

販売グッズ

当日は15時から武道館前でグッズの販売が行われた。
普段滅多にライブグッズは買わないんだけど、今回は記念にレモンの黒Tをゲット。

セットリスト

全19曲で2日目も曲順含め全く同じセトリだった模様。
1st「the stone roses」の曲は全曲演奏している。

I Wanna Be Adored
Elephant Stone
Sally Cinnamon
Mersey Paradise
(Song for My) Sugar Spun Sister
Bye Bye Badman
Shoot You Down
Begging You
Waterfall
Don’t Stop
Elizabeth My Dear
Fools Gold
All for One
Love Spreads
Made of Stone
She Bangs the Drums
Breaking into Heaven
This Is the One
I Am the Resurrection

さいごに

予備知識がなかった分、とにかくよくも悪くも印象的だったのは、イアンの歌いっぷり。

公演後、ツイートを見ると「音痴・音程外してた」のオンパレード。
同時に多数の「良かった」「最高だった」の声。

武道館の大部分の客は「曲もライブも最高、歌は下手だった」という感想を共有したようだった。

しつこいけど、これはよく考えたらよくわからないことで。
観た本人も上手くのみ込めないので、観てない人は余計不思議だと思う。

元々奇跡みたいなバンドだと思ってたけど、また別の意味での奇跡感が増した体験となった。

復活後、いまだニューアルバムが出るとか出ないとか取りざたされている。
これまでの動向を考えても、コンスタントな活動は期待せずに、気長に待っていたいと思う。

そして、ぜひまた新譜を携えて来日を果たしてほしい。

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