「ELECTRO SWING」

2000年代に欧州を中心に流行したElectro Swing(エレクトロ・スウィング)。
自分がESを知ったのは2016年頃で、一過性の流行りという以上に一つのシーンとして定着・拡大し続けていると思います。

この記事では、ESの魅力やオススメのアーティストを中心にエレクトロスウィングについて紹介します。

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Electro Swing(エレクトロ・スウィング)とは?

世界初のElectro Swing専門サイト「Electro Swing Thing」では次のように説明されています。
(つたない訳で発祥の流れもだいぶ端折ってます。)

エレクトロスウィングはハウス、ヒップホップ、ドラムンベース、EDMと古典的あるいはモダンなSwing、Jazzのエッセンスを組み合わせた音楽ジャンルです。Parov Stelar、Caravan Palace、Caro Emerald、Jamie Berry、Alice Francis、Bart&Baker、ProleteR、Peggy Suave、Swing Republic、Waldeck、Wolfgang Lohrらがこのジャンルの代表的なアーティストです。

エレクトロスウィングを正確に定義することは誰にもできません。それは本当に個人的かつ集団的な体験であり、多くの人に好まれているものです。エレクトロスウィングは人々を集め、楽しませ、日常の問題を忘れさせます。そこにルールはなく、ただ楽しんで、盛り上がって、夜更けまで踊るだけです。

エレクトロ・スウィングの4大要素と4つの魅力

エレクトロスウィングは音楽ジャンルの一つであると同時に、「HIP HOPの4大要素」と同じように複数の要素を内包した一つのカルチャーと捉えるとしっくりくるような気がします。

エレクトロスウィングにも通じるHIP HOPの4大要素というのは次の4つ。

  • RAP(ES→歌)
  • DJ
  • ブレイクダンス(ES→neo swing etc)
  • グラフィティ(ES→広くアートワーク・ファッション含む)

そんな4大要素を踏まえつつ、自分が感じるエレクトロスウィングの魅力をまとめると次の4つです。

① レトロフューチャーなビジュアルの格好良さ

エレクトロスウィングのビジュアル的なイメージの特徴を捉えたMVの一つが、Caravan Palaceの「Suzy」。

ブリキのロボットに宇宙船。歯車、蓄音機、メカメカしい小物にネオン管。
他にもヴィンテージ感のあるモチーフが満載で、音楽性に通じるこのレトロフューチャーなビジュアルがエレクトロスイングの特徴のひとつ。

この世界観は「スチームパンク」というジャンルにも共通してます。
スチームパンクはSFジャンルの一つですが、そういった嗜好を元にしたスタイル・カルチャー全般を指していて、エレクトロスウィングも一種のスチームパンクと言えそうです。

[出典] 「スチームパンク東方研究所 未来懐古的造形世界」(Amazon)
スチームパンク専門誌が刊行されていたり、アニメだと「スチームボーイ」や「ハウルの動く城」がスチームパンク物として有名。

② 楽曲のノリの良さと中毒性の高さ

音楽性としてはスイングジャズの軽快なメロディやリズムをエレクトロな打ち込みサウンドでさらにパワーアップさせているのが魅力。
もちろんムードのある曲も多いけど、一番の魅力は(個人的に)ノリの良さ。

エレクトロスウィングが「踊れるジャズ」と形容される所以です。

また、Caravan Palaceの曲で例を挙げると「Rock It For Me」。
ボーカル、Zoé Colotisのキュートなダンスもクセになります。

③ 流れるような軽快なダンス

ESの曲でダンスしている動画がyoutubeにたくさん上がってます。
代表格はドイツのSven Ottenで、ダンサー名は「JSM(JustSomeMotion)」。

他にも色んなダンサーの動画を観ましたが、Sven Ottenは別格。
この人の半径数メートルは地球の重力の圏外かと錯覚するような軽やかさ。

このダンスはneo swingなど様々なスタイルを元に独自にアレンジしたものだそうです。

「Lost in the Rhythm」Jamie Berry feat. Octavia Rose

④ 良質なDJ play・Mix

日本のES DJにOnnojiという方いて、Sound Cloud、MixcloudといったサービスにESのMixを上げています。
また、イベントでのDJなど日本にESを広めるべく幅広く活動されてます。

この方のMixで初めてESのMixを聴いたんですが、これがめちゃくちゃ良くて。

ESのコンピやプレイリストはたぶん30以上は聴いてますが、一聴してダントツで気に入りました。
その理由は選曲はもちろん、コンピと比べてテンションや繋ぎ方に統一感があるのが大きそうです。
BGMとしても最適。

エレクトロスウィング 特にオススメのアーティスト5組

特にオススメなアーティストを先に5組、その後5組の計10組紹介します。

Caravan Palace(キャラバン・パレス)

すでに2曲取り上げてるフランスの8人組エレクトロ・スイングバンド。

2008年に1stアルバム「Caravan Palace」でデビュー。
本国フランスの他、各国のチャートにも名前が上がり、日本のサイトでもよく名前を見かけるエレクトロスウィングを代表するアーティストです。

そして、2015年リリースの「Lone Digger」はESを代表する一曲。
再生回数は2億回を超えてます。

Parov Stelar(パロフ・ステラー)

オーストリアのDJ。Parov Stelarはアーティスト名で本名はMarcus Füreder。

2000年以前から活動しており、エレクトロスウィングのパイオニアとして挙げられるアーティストの一人。
資質や全体的な作品のクオリティでいうと、今回取り上げているアーティストの中でも群を抜いていて、ESというジャンルを超えてると感じます。

2010年リリースの代表曲のひとつ、「Booty Swing」。

TAPE FIVE

ドイツのプロデューサー、Martin Strathausenによるユニット・プロジェクトで、2005年に1stアルバム「Swingfood Mood」をリリース。

2019年の新作「The Roaring 2020s」も王道を押さえつつ、レゲエ(ボブ・マーリー「I Shot the Sheriff」)のESカバーなど新機軸を織り交ぜた超オススメの名盤。

TAPE FIVEはESコンピの収録数が最上位のアーティストで、Remixでもよく名前を見かけます。
視聴回数から言って一番の代表曲は「Bad Boy Good Man」。

Wolfgang Lohr

2011年からelectronic music sceneで活躍するドイツのプロデューサー。
上記のES専門サイト「Electro Swing Thing」の運営者の一人でもあるそうです。

Wolfgang Lohrは多くのミュージシャンとコラボしていて、2020年1月にリリースした「Twenties」はこの後紹介するswingrowersのvocal、Loredana Grimaudoとのコラボ曲。

歌唱でもラップでもなくセリフの羅列だけのようなボーカルが印象的で、また新たなESの可能性を感じさせてくれるような曲です。

Bart&Baker

2007年にパリで活動を開始した、タキシードとシルクハットがトレードマークのコンビ。

Bart&BakerはよくESコンピレーションのプロデュースをしたり、収録曲のremixをしてます。
2人のコンピはただ同ジャンルの寄せ集めじゃなく、アルバム全体が一つの作品として調和してるような統一感を感じさせます。

「Roar」は2019年リリースのコンピ「Electro Swing Party, Vol.2」のラストを飾る一曲。
この曲はES関係なく、2019年の個人的ベストと言ってもいいくらいお気に入りです。

エレクトロスウィング・オススメのアーティスト5組

全員女性ボーカルでシンガー2人とバンド3組です。

Cut Capers(カット・ケイパーズ)

イギリス出身の9人編成バンドで、2012年にシングル「THE PINSTRIPE EP」でデビュー。

女性シンガー+男性2MCというヒップホップ色の強い音楽性が特徴。
そして、「Cut Capers(跳ね回る・ふざけ散らす)」というバンド名通り、MVがとにかくハイテンションで楽しそう。

特にエレクトロ要素がなくても「エレクトロスウィング」を感じるのはこのノリの良さ故でしょう。

「Say What」は2nd「メトロポリス(2019)」日本盤のボーナストラックとしても収録されてる代表曲。

Caro Emerald(カロ・エメラルド)

オランダ、アムステルダム出身のシンガーで、2009年に「Back It Up」でデビュー。
1stアルバム「Deleted Scenes from the Cutting Room Floor」(2010)はオランダで30週連続チャート一位を記録します。

2nd「The Shocking Miss Emerald」(2013)で日本デビューを果たし、来日公演も行ってます。

Alice Francis

アメリカの「ソウルの女王」はアレサ・フランクリンで、こちらはアリス・フランシス。
思い出す時にいつもつまづきます。

ポーランド出身のシンガーで、デビュー・アルバムは2013年の「St. James Ballroom」。
「Shoot Him Down!」のようなレトロなアニメーションもESとマッチしてます。

Swingrowers(スウィングロワーズ)

DJ&プロデューサーのロベルト・コスタ率いる、イタリア・シチリア出身の4人編成バンド。2012年「Swingrowers」でデビュー。

この記事で取り上げたアーティストは特にカラーが際立ってるものばかり。
その中では個性は控え目だけど、最もポップで洗練されていて、色んなシーンで聴きやすいです。

「Hits & Remixes(2017)」収録の「Butterfly」。

Electric Swing Circus

イングランド、バーミンガム出身の7人編成バンド。
デビューアルバムは2011年の「Penniless Optimist」 。

Vicki OliviaとLaura Oのツインボーカルがパワフルで、MVもインパクトがあってパンチが効いてます。
2016年リリースの「EMPIRES」は異様に中毒性が高く、特にサビが耳に残ります。

さいごに

エレクトロスウィングの魅力やオススメアーティストの紹介でした。

プロフィールは記事作成にあたって確認したものが多いんですが、本当にここ10年、20年のムーブメントで「欧州で大人気」というのが伝わります。
これだけ世界各国のアーティストがいる中、アメリカ勢が一組もいないのは珍しい。

そんな中、日本でもエレクトロスウィングの話題を見かけるようになったのでESファンの方はぜひ関連記事もチェックしてみてください。

apple musicでプレイリストも作ってみました(2020.01)
ElectroSwing_JukelogPlaylist|Apple Music

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